真一

アイダよ、何処へ?の真一のレビュー・感想・評価

アイダよ、何処へ?(2020年製作の映画)
3.6
 ブルーヘルメット🟦の国連平和維持軍に対し、私たちは「平和の使者」😇というイメージを抱いていないだろうか。そんな美しいイメージを打ち砕き、無力、無能で無責任な体質☠️を暴いたのが、実話ベースの本作です。
 
 舞台は、血🩸で血🩸を洗う民族紛争🔫が繰り広げられていた、1995年当時のボスニア。国連平和維持活動(PKO)🇺🇳のため東部の町スレブレニツァに派遣されていたオランダ部隊🇳🇱は、虐殺を恐れて逃げてきたイスラム系住民👦の対応に追われていた。国連施設🇺🇳の防護フェンスにつかまり「中に入れてくれ」と叫ぶ何千、何万の人々。その後ろには、恐怖のセルビア人武装勢力🇷🇸が迫る。

 窮地に追い込まれた青いヘルメット🟦のオランダ部隊🇳🇱。住民保護という崇高な任務を負う司令官のカレマンスは「NATOは間もなくセルビア人勢力を空爆する。だから安心してほしい」と説明するが、住民の理解は得られなかった。国連平和維持軍🇺🇳を名乗っているとはいえ、装備も人員も貧弱で、国際社会が総力で送り込んだ精鋭部隊には見えないからだ。

 そんな中、孤立するカレマンスに一本の電話が入る。相手は、セルビア人勢力🇷🇸の大ボス・ムラディッチだった。「住民代表」という名の捕虜数人👤👤👤を従えて会いに来い、という。ムラディッチが法外な要求を突き付けてくるのは明白だった。だが拒否すれば、オランダ部隊🇳🇱がどのような目に遭わされるかも分からない。平常心を失ったカレマンスは、国連平和維持活動🇺🇳の精神とはかけ離れた行動に出てしまう―。

 本作品はこうした史実を、イスラム系住民の主人公アイダ🧍‍♀️の目線を通じて浮き彫りにしていきます。アイダは、英語通訳としてオランダ部隊に仕える臨時国連職員🇺🇳。アイダの国連平和維持軍に対する信頼が崩れ去る様子が、リアルに表現されています。

 ブルーヘルメット🟦が問題視されたケースは、ほかにもある。あのルワンダ🇷🇼大虐殺の際、ベルギー軍🇧🇪を中心とするPKF🇺🇳は、自軍の安全を最優先にするあまり、フツ族によるツチ族殺りくを追認したとして、強く非難された。一連の経過は、映画「ホテル・ルワンダ」が取り上げている。要するに、民族対立の憎悪と殺意が渦巻く空間を仕切る能力も意欲も、青いヘルメットをかぶった「雇われ部隊」は持ち合わせていないのだ。

 ところで現在、日本🇯🇵は自衛隊をどの程度派遣しているのだろうか。調べてみたら、わずか3~4人だった。かつてはPKO参加を巡り、国論を二分する騒ぎになったものだ。政府は国連活動の深刻な状況を知り、やばいと感じて戦線縮小を図ったのだろうか。

 ちなみに、最も多くの要員を派遣しているのは、米国でもフランスでもなく、アフリカのエチオピア🇪🇹。2位が南西アジアのバングラデシュ🇧🇩だ。背景には、危険な目に遭ってもいいから要員手当をゲットしたいという金銭的欲求💰️があるとのこと。PKO🇺🇳の闇を、またまた見せつけられた思いがします。
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