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アイダよ、何処へ?のvenom9のレビュー・感想・評価

アイダよ、何処へ?(2020年製作の映画)
4.0
ボスニア・ヘルツェコヴィナ紛争時、実際にあった”スレブレ二ツァの虐殺”〜セルビア人勢力によるボシュニャク人(イスラム教徒系の人々)男性8,000人超の殺戮〜を描く物語です。
当時、国連平和維持活動部隊としてオランダ軍がスレブレニツァを警備していて、いわゆる「非武装地帯」になっていたのですが、セルビア人のラトコ・ムラディッチ率いるスルプスカ共和国軍によってあっさり蹂躙されます。国連が何をどう認定しようが、兵員や物資で圧倒的なセルビア人勢力の前に全くの無力で、避難所は簡単に占拠され、避難民は次々バスで方々へど送られ、抹殺されます。
国連平和維持活動部隊の通訳業務に従事するアイダが語り部となって、惨劇の一部始終が描かれます。アイダが通訳であっても、その家族は特別扱いされません。また、セルビア人勢力の圧力に弱々しく屈する国連平和維持舞台の情けなく哀れなこと。何よりも、人は互いを殺し合うことをやめない、愚かで醜い存在だと感じます。戦争は憤怒、怨嗟を燃焼剤に暴力を高濃度圧縮し暴発させますが、戦争が憎いと言ったとてそれはまさに人間の所業です。
アイダが自宅を訪れるシーンがありますが、快適な我が家は見知らぬ者が勝手に住みついていました。暴力や殺戮の被害者になるほどでないとしても、愛着のある我が家に他人が住み着く事態に、非情さ理不尽さを強く感じました。
(U-NEXTで鑑賞)
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