まさわ

国境の夜想曲のまさわのレビュー・感想・評価

国境の夜想曲(2020年製作の映画)
3.5
息子が殺された部屋で嘆く母、精神科病院で祖国の歴史を芝居にする患者、IS統治下での惨劇を絵にして語るヤジディ教の子供たち(後述)…自身の痛みを語ることで癒していく言葉以外に意味のある会話はとても少なく、多くの場面はそれがいつどこで撮られたものなのか具体的説明はない。わからないながらに見続けていくと、それがいつどこのという個別性よりも、どこにでも起きうる普遍性を感じとることができる。銃声が聞こえても漁に出るようなこと、生きるということ。

後述
これは違うドキュメンタリー映画『ソニータ』にもあったのだが(ソニータはアフガニスタンからイランへ逃れてきた難民少女である)、イランの支援センターでは国を離れたときのつらい出来事をその子に演じさせて、「そのあと本当はどうしたかったか」「こうだったら良かったのに」というシーンに演じ直させるプログラムがあったり、理想のパスポートを書かせたりという取り組みをしていた。
おそらくこのヤジディ教の子供たちも同様のプログラムを受けているのかなと思った。嫌なことをわざわざ言語化して思い出させるなんて残酷だと感じることもできるだろうが、自分の身に何が起きたのか客観的に認識し、記憶や感情を整理させることは彼らにとって大切な「過程」なのではないかと思った。
まさわ

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