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もう雪は降らないのkyokoのレビュー・感想・評価

もう雪は降らない(2020年製作の映画)
3.9
高級住宅街と呼ぶにはあまりにも味気なく見分けがつかない戸建がずらりと並ぶ区画を、折り畳みベッドを肩に下げて次から次へとドアチャイムを鳴らしながら漂流する男。彼がただのマッサージ師でないことは冒頭で分かる。
柔和な面差しと柔らかな振る舞いをする男が指をパチンと鳴らした瞬間、彼らの意識は森に抱かれ安寧が訪れる。降り注ぐ雪はプリピャチに舞った塵にも見えるけど、死への恐怖はそこにはない。

原発事故によって母と故郷を失った移民の孤独と、移民を受け入れる側の傲慢さ空虚さを、不思議な優しさで描いた今作はこの監督にしては割と分かりやすい方だったと思う。もちろんいつものシュフモフスカ節は健在で、ファンタジー要素は後半になるにつれて強まり、加えてあの唐突なマジックショーのなんだコレ感はちょっとクセになってきた。最後の最後で、テーマこっちだったの⁈にやや混乱。

マッサージされるワンコがめちゃくちゃかわいい。
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