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親愛なる同志たちへのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

親愛なる同志たちへ(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ノヴォチェルカッスク虐殺を描いた作品。

まずは“フルシチョフ政権下のソ連”という舞台設定が興味深かったですね。
食料不足に賃金カット、そして労働者によるストライキと、共産主義社会とは思えない事態の連発には驚かされました。
その一方で、役人達は下の人間は上の人間のせいにして、上の人間は下の人間のせいにしてと、どいつもこいつも無責任な奴ばかり。
これが無批判と思考停止の先にある、硬直した組織の限界なのでしょう。

そんな中、デモ隊に向けて銃撃事件が発生します。
惨劇を美容院の中から捉えたショットも印象的でしたが、それよりも怖いのが政府による隠蔽工作。
デモの当事者はともかく、負傷者を診た医療関係者にまで箝口令を敷く徹底ぶりで、何時の時代も独裁政権を支えるのは、情報統制と暴力による恐怖なんだなと、改めて思いましたよ。

映画の後半は、主人公の娘探しがメインに描かれていきます。
個人的には『アイダよ、何処へ?』を想起したりもしたのですが、それと比べると、ちょっとサスペンスが弱かったかなと。
もっと娘探しに奔走したり、或いは娘を隠す為に必死になる展開があっても良かったかもしれません。

この時代のロシアを描いた作品は、なかなか見る機会がないので、それだけでも新鮮でしたし、モノクロの映像も綺麗なので、古臭さを感じずに見る事が出来ました。
歴史の暗部を映画に出来るくらいロシアは変わったのか、それとも本質的には全く変わっていないのか。
現在の世界情勢を考えると、今こそ見る価値のある作品だと思います。
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