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ニューオーダーのmのレビュー・感想・評価

ニューオーダー(2020年製作の映画)
4.0
@「死者だけが戦争の終わりを見た」


監督自身凄く切羽詰まっている感覚が表れていた作品。大好きですミシェル・フランコ監督!『母という名の女』に惚れ、『ある終焉』で驚かされ、『父の秘密』で叩きつけられた。明らかに鬱映画をつくる優れた監督。もう一度言おう。ミシェル・フランコ監督、大好き!

今回も彼の巧みな人物描写を楽しみにしていたのだが、どこか俯瞰しているような作品で好きではあったが前3作品には及ばなかった。前作は善だと思われている、思っている人間がなにかの拍子に悪に転じてしまう、悪に転じなければならなかったイメージが多く、人間の隠された卑劣さを描いていた。そこが大好きだった。

だが、今作は悪は悪、善は善。きちんとした線引きがなされていた。いつもの持ち味を抑え込んだストーリー展開になっていた気がする。
勿論今作も監督らしく鮮やかな残酷さはあれど、ひたすら主人公たちが痛め付けられるという不憫さを描いていて混在する善悪が無かった。

ただ、それを感じて今作を描かなければならない何かを監督自身が持っているんだろうな、と思った。今までは親子や身近な人物、パーソナルな場所を描いていたがそれが体制を批判する大きな目線に立っていたことが驚き。それと共に、そういう世界がミシェル・フランコ監督には近いんではないか?と感じてしまった。メキシコだもんな、無いことはないよな、と。

監督が今描きたい、描かなければならないディストピアなんだろうな、とファンであるから感じてしまった。

cc/これは悪夢か、無慈悲な現実か──
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