真田ピロシキ

ニューオーダーの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ニューオーダー(2020年製作の映画)
3.3
金持ちの幸せな結婚式が暴徒化した貧困層デモ隊の乱入により地獄へと一変。というあらすじにビビッときた。暴動が起きるほど深刻な事態なのに、結婚式に遅れてきたオッサンが「空港で足止め食らって」とまるで他人事な口ぶりなのが格差による断絶を感じてイラつく。突如地獄が訪れただあ?貧困層は日常が地獄だろうよ。ガタガタ抜かすな。暴徒が金持ちどもから奪う姿は興奮する。奴らが低賃金労働者から搾り取った富だ。奪って何が悪い。普通の日本人様の奴隷根性では「ムキーーデモは悪なんだからね!金持ち権力者様は正義だから!」とどんなにいびられても媚びへつらうのだろうが、昔はあまりに酷いと百姓一揆が起こってた事を忘れてるんすかね。江戸時代以下の日本人様。美しい国。

こういう話はゾンビの姿を取って表現するのがセオリーだったが、最早比喩など生温いとダイレクトに表現するところに現実から目を逸らすなという圧を感じ、同じ貧困映画でも『ジョーカー』のような無敵の人に過ぎない奴に重ねさせない警鐘もあると思う。主人公のマリアンだけは妻の高額な手術が必要で助けを求めてきた元使用人を自分の都合を後回しにして助けようとしてて、必ずしも暴力礼賛とならないようにしたのかと思った。

風向きが変わったのは一段落つき軍が戒厳令を敷いてからで、体制が変わり指揮系統が混乱してるからか、その軍がまるで北斗の拳の悪役のようなドチンピラ集団。金持ってそうな人は収容所に集めて身代金を要求して、レイプ拷問なんでもあり。一般市民にはどうかって?貧乏人には更なる塩対応で、なんとか病院に行きたがってた例の使用人も撃ち殺されて妻もそのまま死亡。でもこれで正しい。軍隊なんかそんなもん。軍が危機を救うヒーローになってはいかんのだ。これも軍隊に無邪気な羨望を向け(でも自分は入らない)不祥事にも口を紡ぎたがる普通の日本人様には通じなさそう。絶対に日本では撮れなさそうな映画だった。そういう意思表示は好きだが、果てしなく胸糞が悪いので好きではないです。見なきゃよかった。