てっちゃん

ニューオーダーのてっちゃんのレビュー・感想・評価

ニューオーダー(2020年製作の映画)
4.2
こいつはやばそうという作品ってなんとなく雰囲気やらポスターやらで伝わってくるじゃないですか?

本作も多分に漏れずその手の作品だなと感じていたものの、なかなか劇場へは足を運ぶ時間がなくて観られないなと思っていたら、配信という素晴らしい手段があったので、配信で鑑賞することにしました。

結論からすると、本作はディストピア作品として、かなりの完成度を誇っているのではないでしょうか。

メキシコを舞台にして物語は進んでいくのだけど、初めは富裕層と貧困層を描いた作品なのかと思っていたら、腐り切った国家、私利私欲が蔓延する世界、それらに食い物にされる人々、食い物にされていることに気づかない人々、、といった感じで、ひたすらに観客を突き落としていく。

その突き落とし方も、実にテンポがよくて観ていてダレる気配が全くしない。
それもそのはずで、90分弱の作品でありながらも、てんこ盛りの内容が故に、なかなか人物関係だったり、物語の展開に少し置き去りにされる感じがしなくもない。

でもそれは、それくらいのスピード感を持ってじゃないと、本作の"あまりにも異常な日常"と"いきなり崩壊する日常"を描くうえで、この急展開は必要なことであったと感じたので、そこは本作の味であると感じた。

というかこの物語内容を90分弱にまとめこんで、しかも驚愕すべきは現代の問題点を投げつつも、その先まで見せていることではないでしょうか。

当然のように、誰なんだこの手練れは?と思い、監督の名前を調べるとミシェル・フランコさんでした。

同氏監督作品「父の秘密」を観たときの駄文自己満足感想文を読み返すと、このときより同氏の演出方法の巧みさに注目していたのが伺い知れ、こうしてまた出会うことができたのは、引き付けられるものがあったのでしょうかね。

私はメキシコの社会情勢について全く存じ上げないことが多く、マフィアがやばい、政府がやばい、程度の認識しかなかった。
本作で描かれていることが、どの程度現実と重なるのかは知らないけども、それでも感じるのは、”このままでもいいの?”というメッセージ。

なにをもって”このままでいいの?”なのか。
このまま軍国国家に向かっていってもいいの?、このまま貧富の差が大きくなってもいいの?、自分の大切な人がいきなりいなくなるような世界でいいの?、腐りきった世の中でいいの?、、人それぞれ感じることがあるだろうし、それを突き付けられる力がある作品だ。

本作の印象的なのは、”欲”にまみれているし、その”欲”を取り払う手段として、”暴力”がある。

しかもその暴力が、ある角度から見ると革命とも取れるし、また違う角度から見ると殺戮ですらある。
しかしながら結局は暴力なのである。
では、その暴力によって何かが解決しただろうか?
結局のところは、本作屈指のお口あんぐりのラストシーンが暴力の果てであり、新たな暴力の始まりでもあるのではないでしょうか。

いろんな感想が飛び交うのところが本作の魅力であることは間違いないが、胸糞映画ってだけで片付けてはいけないなと感じましたとさ。
てっちゃん

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