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ニューオーダーのTSのレビュー・感想・評価

ニューオーダー(2020年製作の映画)
3.6
【楽園から地獄へ】77点
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監督:ミシェル・フランコ
製作国:メキシコ/フランス
ジャンル:ドラマ/犯罪
収録時間:84分
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 胸糞悪い映画の一つとして紹介されていたので鑑賞。確かに後味が悪いですが、これが鬼気迫る人間達の本性なのです。結局は人間というのも所詮言語コミュニケーションがとれるという特殊能力を備えた生き物に変わりはなく、他の生物とは違うと日々アピールしている分、惨めだなと感じました。ニューオーダーとは「新体制」ということなのですが、作中に見え隠れするその新体制も果たしてどんなものなのやら。平和が一番いいなとつくづく思ったのですが、それは上流階級の平和であり、一文なしの人間たちからすると地獄なのです。

 メキシコのとある豪邸。念願の娘の結婚パーティーが実施され、華やかなムードであった。しかし、一方外部では現体制に不満を抱く労働者階層が暴動を起こしていたのだが。。

 最初20分ほどは、豪邸でのパーティーの様子が映されます。特に臭みはなく、おめでたいねという感じです。もし、暴動側に感情移入を少しでもさせたかったのなら、このあたりで富豪側の落ち度というのを示れたらよかったですがそのあたりは特になく。そして、主人公マリアンが一度車で外に出てから事態は急変していきます。何の躊躇もなく引かれる引き金。一気に地獄絵図と化していくパーティー会場は騒然極まります。一方、たまたまその間、車で会場を出ていたマリアンたちは、別の苦しい道を辿っていきます。

 民衆が暴徒化するというのは他作でもよく見られるシチュエーションですが、それを阻止しないといけない軍部がまた、隠蔽だの悪事を働いていくから驚きを隠せません。結局のところ、こんな政府があるから民衆は不満を抱くのであり、国の統治の難しさを如実に示す作品と感じました。主人公側だから助かるだろう、なんて甘い覚悟を持って見てはならない。全ての人に等しく、緊張感が与えられています。しかし、今作は本当に無慈悲であり、結局は常識のある人が犠牲になっていたりもします。まあ世界なんて不条理ですから、礼儀正しく生きていても不運なことに見舞われることがあります。救いのない映画ではありますが、こういうことはリアルな世界でも十分起こりうるし、何なら現在進行形で発生しているということも知らないといけないと感じました。
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