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ワールド・トゥ・カム 彼女たちの夜明けのwandaのレビュー・感想・評価

3.7
19世紀半ばの今のニューヨークの片田舎。農家の嫁アビゲイルは、娘を亡くし喪失感でいっぱいだったが、隣家に越してきたフィニーの妻タリーと次第に親密になり心が満たされていくが…


と言うのがざっくりとしたあらすじ。

同時期に製作され、しかも時代的にも似たような女性同士の恋愛映画、「燃ゆる女の肖像」「アンモナイトの目覚め」と見比べて見たかった本作。

アビゲイルをキャサリン・ウォーターストン、タリーをヴァネッサ・カービーが演じている。

私の好みで率直に言えば、「惜しい」「痒いところに手が届かない」つくりの映画だった。

特にこの時代の結婚生活は、物理的にも精神的にも厳しく、抑圧され自由がない女性、という図はよく伝わるし分かる。夫に従うだけの女性っていうの?

夫と分かり合えず、針のむしろの上を歩くような結婚生活のつらさを共有しあうアビゲイルとタリー。

でもね、映画はアビゲイルの日記帳的なモノローグで日々の厳しい開拓地生活がおおよそ語られ、我々が期待する肝心のキマシタワー(笑)が圧倒的に少ない。

モノローグをだめと言わないけど、多すぎ、時には会話を遮ってまで語られるのでいささか過剰に思えた。二人が何を話してるかを聞きたいのに。

キャサリンとヴァネッサって見るまでは「どうかな?」という感じだったけど、ケミストリーはとても良い。息の使い方、視線の動かし方、間の取り方とか、アビゲイルとタリーの距離感、二人を取り巻く空気がね。
(少なくともケミストリーに関しては、アンモナイトの二人よりかは“バランス”があったように感じた)

しかし、そのケミストリーの見せ場とでも言うか、えろにしても何にしても足らない、もっと出せー!コルァー!(過激派)

ネタバレになっちゃいますが、最後まで見れば分かる通り、案の定、出し惜しみですよ、これ。思うに構成か編集がよろしくないのかなぁ?

モノローグにしろ二人の台詞にしろ手紙にしろ、言葉の使い方や選び方は詩的で美しさすらあり、他の映画とはちょっと違っていい点も感じられるだけに「惜しい」と書いたわけです。


まとめ。
単なる私の嗜好で決めるなら(笑)
アンモナイト>ワールド>>燃ゆる
でも映画的なうまさなら
燃ゆる>>アンモナイト>ワールド
なのかもしれないでしょうね。


以下、ちょっとネタバレ。



始終アビゲイルのモノローグなので、タリー側の心情も同じくらい知りたくなってしまうけれど、映画はアビゲイルの喪失と、それに折り合いをつける物語とすれば納得できるかなぁ。だからこそ、最後のあのシーンは一気にぶわっと来た。
私も想像の中でなら、今まで何人もKILLしてるけどね…くそぅ…(物騒)
そろそろ、本物のハッピーエンドが見たい!


1/12追記。見終わってしばらく経つけど、まだちょっと引きずったり、この映画の事を考えているので、好きなのかもしれない。原作も読みたい。


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