francois708

ワールド・トゥ・カム 彼女たちの夜明けのfrancois708のレビュー・感想・評価

4.0
タリーとの初めてのキスのあと Astonishment and joy とつぶやきながら手足を広げて身をそらして余韻にひたるアビゲイルが素敵だった。

1856年のアメリカ合州国といえば「若草物語」と同じころだろうか。
若草物語では父親の不在が四姉妹ののびのびした生活を保証していたが、この映画では逆に、男たちの現前が二人の女性を窒息させているように見えた。女性は男性に従うのを当然と考える不機嫌で陰鬱な男たちが、雪と氷ですべてを凍らせる冬の気候のように、女たちを抑圧する。
アビゲイルが夫に、地図帳を買いたいというのに、まじめに取り合ってくれない。そして彼女の誕生日に地図帳をプレゼントしてくれたのは、タリーだった。
この地図は、アビゲイルが来たるべき世界 world to come に向けて歩みだす手がかりとなるものだった。それが夫ではなくタリーによって与えられることの意味は小さくない。夫ではなくタリーが、未来への希望を与えてくれる存在なのだった。あのような結末でさえなければ、二人で手を取り合って、新しい道を歩みだしていたにちがいない。

途切れがちの静かな会話とサキソフォン(?)の寡黙な音楽。こういう静かな映画が好き。
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