陰謀論者X

ザ・デイ・アフターの陰謀論者Xのレビュー・感想・評価

ザ・デイ・アフター(1983年製作の映画)
3.0
この作品が劇場公開されたのは東西冷戦のあおりでモスクワオリンピックをアメリカも日本も「政治的理由」で不参加とした時代です。当時はニュースを見てると東西両陣営の最新型中距離核ミサイルがどこそこに配備されたという情報をよく流していました。経済的にはバブル前で日本のマネーが非常に強く1億総中流と言われていましたが、核戦争になれば全て吹き飛ばされるしまうという不穏な空気感はうっすらと根底にあったように思います。その「もしかしたら」の恐怖と、核戦争後の「その後」に翻弄される人々を描いた群像劇です。もともとテレビ用映画という事もあり描写的には時代を感じさせるものがありますし被曝メイクも現実とは程遠いそれなりのものでしたが、当時の恐怖をうまく突いたタイミングでの公開だったので、かなりの衝撃をもって迎えられました。核爆発の瞬間にレントゲン写真のように骨が透ける人々の姿や、遠方で炸裂した核爆発の巨大なキノコ雲の描写は有名。放射性物質を浴びた影響で頭髪が抜けた登場人物らの「その後」を描きつつ、復興の兆しなど全く見えないまま物語は終わります。現実もそうなるであろうと容易に想像が喚起される構成は、イギリスBBC製作の「スレッズ」とともに核兵器の恐怖を描いたトラウマ作品としてしっかりと記憶に刻み付けられました。
陰謀論者X

陰謀論者X