utatane

いとみちのutataneのレビュー・感想・評価

いとみち(2020年製作の映画)
2.8
ライブが始まって、いとがすっと目を閉じた瞬間、周囲の雑音が無くなり呼吸も止まった…

メイドが三味線を弾くという斬新さに目が奪われがちだけど、いとやメイドカフェ、街全体に漂う閉塞感を新しいアイデアで切り開いていくような展開に、強い絆が伴ってなんともいえない温もりを感じました。

作品には三味線作り(場面では修理)の職人さんや、空襲の語り部のおじいさんなどが登場し、ドキュメンタリータッチな部分は個人的にですが、ちょっと詰め込み過ぎかなと感じました。

しかし、三味線もいろいろな表現があり、東京や京都などで聞くものと、津軽三味線はまた違った趣きがありますね。
厳しい気候が影響するのか、力強く、荒々しさや武骨さの中に繊細ではかない澄んだ音色を併せ持っていて、改めてちゃんと聞くとなんだかいいなぁって思いました、津軽の三味線。

そしていとを演じた駒井蓮さんにも驚きました。ツヤツヤで綺麗なストレートの黒髪でナチュラルな魅力を発揮する役柄で、普通の高校生を普通に演じるのはとても難しいのではないかなと思います。
はっきりと主張するJKと違って、デフォルメせずにストレートに素朴な女子高生を違和感なく演じる力を感じました。

ラスト近くのライブシーンでは、緊張した面持ちから次第に目を閉じて演奏に入り込み、いつしかカッコ悪いと思っていた脚を開いたスタイルになっていて、いとの楽しそうな笑顔に様々な閉塞感を打ち破る明るい未来の光を感じました。
願わくば、もう少し三味線のシーンが欲しかったかな。
ライブシーンとかばばさんとの対話するようなセッションのところとか…
楽しく三味線を奏でるシーンをもう少しだけ。

それともう一つ。
ガチの津軽の方言がところどころ分からなかったので、字幕かセリフで訳してほしかったです。
utatane

utatane