おもち

AWAKEのおもちのレビュー・感想・評価

AWAKE(2019年製作の映画)
4.0
 人間vsAIの将棋、電王戦を描いた物語。吉沢亮主演。
 奨励会(プロ棋士養成機関)で苦戦している中、対照的に好調な同期のライバルであった子に負けたのを機に将棋を辞めてしまい、希望をなくした大学生活を送っていたある日、父親が遊ぶ将棋ゲームの強さに驚いて自分でもプログラミング将棋を作りたいと思い立ち人工知能研究会の門を叩き、かつてのライバルとの異例の再戦を果たすというストーリー。

 将棋ファンも納得の要素がふんだんに盛り込まれていて、ただのプログラマー映画として終わってないのが高評価、奨励会を退会した失意の主人公と新進気鋭のプロ棋士となるライバルの対比がリアルだった。プロとアマの壁は凄まじく高い。でも主人公は人生を腐らせはせずしっかりと大学に進学したのが好手で一気に優勢へ。人工知能研究会の先輩もいかにもな言動、デスノートのLみたいな感じでユニーク。
 当時のAIの進化スピードは本当に恐ろしかったし、今ではAIがこれまでになかった戦型を編み出したり。ABEMAの中継なんかではAIの評価値、推奨手も出て正解不正解をきっぱり判断されて観る側からしたらわかりやすいけど指す側からしたら地獄だろうなと毎回思う。

 物語の核となるのはいわゆる28角事件。本戦前のイベントで発覚したAIのバグを利用して勝つという手をプロ棋士が選択した賛否分かれる実際の出来事をそのまま再現。連盟、ニコニコ、電王手さんの協力もあって再現度はかなり高い。連盟棋士や記者クラブといったプロ関係者、強豪ではあるけどアマチュアであるプログラムの開発陣のそれぞれの思いややり取りもうまく描かれていたと思う。自身が作ったプログラムに「強くなったな」とポツリと言うシーンが印象的、まさに父と子のよう。
 そして最後にやっぱり言わなければいけないのは羽生先生の幼少期のあだ名「恐怖の赤ヘル少年」のオマージュでカープの帽子をかぶった子と出くわすくだり。思わずうおおっとなる最高のファンサービスだった。

 将棋映画というよりプログラミング映画なので将棋をなにひとつ知らなくても全然楽しめる、知っていれば3倍は楽しめる当たり作だった。オススメッ!
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