阪本嘉一好子

In Her Footsteps(英題)の阪本嘉一好子のレビュー・感想・評価

In Her Footsteps(英題)(2017年製作の映画)
4.7
Portrait of an Israeli Family
仏教信徒でも違う宗派だと同じ派の墓地以外に入れないと聞くし、無宗教の父が他界した時この経験をした。でも、宗教色が強くない日本では共同墓地があり、キリスト教、仏教、無宗教の人たちが使える区があるかもしれない。全く知らないが。この映画はAbu Fraihah's familyのドキュメンタリーである。ベドウィンというアラブ人の少数民族がイスラエルに住んでいるが、癌で死ぬ母親(Rudainah)の要望を聞いて、住んでいるユダヤ地域(Omer)の墓地しかないので、そこに入れて欲しいと。

母親は Gathという地域のパレスチナ人で、ベトウィン人の父親と恋に落ち、彼の故郷(Omer)で生活を始めた。しかし、彼女は夫なしで外にも出られない厳しい規律のなかにいた。子供たち(大学生、映画監督、看護婦になっている)の教育のためべトウィン民族のアラブ地域を夜逃げした。

この母親と父親 (Awda)は以前ネゲブ砂漠の北側にある Tel Sheva(イスラエル政府が作ったべトウィン人が住む場所)というベドウィン人が住んでいたアラブ人地区にいたが、OMERオメアという町はユダヤ人地域でアシュケナージのユダヤ人が主に住んでいる(はっきりいって金持ち地域にみえる)ところである。この市役所に娘は何度も交渉して、ここの住民だから母親をOmerオメアー市の墓地に入れて欲しいと頼んだが拒否された。母親と父親が結婚した Tel Shevaは夜逃げしたから、もう戻れない。

地図で確認したが、この二つの町は車で7キロぐらいしかはなれていない。そして、パレスチナの自治区にあるわけではないのに、教育、職業、などイスラエル人としての平等な人権すらない。

延々と続く会話のあと、最終的に、母親は他界し、Jatt(母親が成長したモスリム のコミュニティーの墓場)に入ることになる。最後のシーンでの父親と子供の会話で気になったことがある。これに関する結論は私自身全くないが、学校などで討論するいい題材になる。

子供たちはベッドウィン人の住むまずしい地域を離れて、ユダヤ人の住む地域に移って、教育の機会もユダヤ人と同じように与えられて、大学にも進んで、自分の生きる道を探しつつある。アラブ語はままならないが、(話せない兄弟もいる)ヘブライ語を使ってユダヤ人の人々の社会に入っている。べトウィン民族、パレスチナ人のルーツから離れてしまっている。