シネマスナイパーF

ザ・ファブル 殺さない殺し屋のシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

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ファブル、アツいな…

観に行った理由は前作が好きだからなのですが、前作とは別物級の変身を遂げている
キャストや話の規模などは明らかに前作より縮小しているにも関わらず、これほどのグレードアップを見せている理由は、映画としての格が大幅に上がっていることだと言い切っちゃう


オープニングからして前作とは別物であることを宣言している
過剰な演出をせず劇伴も流さず、ただただ淡々と殺しを重ねていくプロの仕事を映すだけ、というクールさ
その中でさり気なくしかし超かっこよく現れるタイトルが最高すぎるし、極めつけの車絡みアクションも凄まじく、このド頭で既に前作超えは確定していて、日本のアクションエンターテインメントの新たな傑作に名乗りを上げる勢いを感じずにはいられない

今作は原作からのエピソードの抽出が滅茶苦茶上手くいっているのではないでしょうか
無理矢理さや不自然さなどはほとんど感じなかった
おそらくそもそも原作が周到でよくできている展開なのでしょうけど、ヒナコが立ち上がるまでの過程とその結末には涙
サトウが普通の人間として生きることを強く意識し、理解していることが分かる台詞が多々あったのも好印象で、「責任や…普通っていうのはそういうもんやろ」や、手が汚れたとヒナコに指摘されたことに対して「こんなもん汚れたうちに入らない」と答えるなど、心に響く言葉が多いのも素晴らしかった
人間ドラマを蔑ろにしない良い脚本だったと思うよ俺は

お笑いパートは、抽出してみればテレビ的と言えるでしょうけど、前作のようなくどさ、うるささは感じさせないバランスになっている
お話自体が割と重めな中で、小休止的に挟まれる分には遠慮なく笑える
アキラとヨウコの掛け合いは必見
佐藤の絵に笑ってしまうのを我慢しているとことか普通に誘い笑い喰らっちまったし、やっぱああいうのは佐藤二朗じゃなきゃできないよな

俳優陣が漏れなく素晴らしい仕事をしています
あのアクションをやりきっている岡田准一はもう言葉にできない凄まじさ
堤真一はこれを観ると超名優だと改めて感じるね
激しく両極端な二面性を持っているが、出している雰囲気はどちらの場合も変わらない、という恐ろしい人間を完璧に演じているし、彼が終わり際に見せる僅かな感情の機微も完璧に表現している
ヒナコ役の平手友梨奈は流石の顔力、眼力で、役の持つ複雑さを見事に体現しつつ、年相応の可愛さを遺憾なく発揮する器用さも見せつけてきて天晴
堤真一と平手友梨奈、この二人が映画自体に超厚みを与えている
安藤政信は、彼が演じるにはあまりに普通の人間すぎるキャラクターが当てられていますが、勿体ないとは感じない
彼が木村文乃の素晴らしいアクションでボコボコにされた後、佐藤から更に受ける屈辱は、安藤政信という男がやられ役になることでより一層際立ち、佐藤、いやファブルの伝説的強さに対する畏怖を我々にも感じさせてくれる
彼等の熱演が、この映画を格式高いものにしていると言って間違いないでしょう

クライマックスの団地アクションは鳥肌が止まりませんでした
自分は予告等一切見ていない状態で行ったため、心底面食らい、唖然としていました
足場崩れのシークエンスは、こんなの見たことねえ!すげえ!という映画を観るうえでの原始的な喜びを感じさせてくれる
割と賛否分かれている謎の強者とのタイマンも、こういうアクション映画にはつきものなので、サービスシーンとして大いに楽しむことができました

なんとかならんかと感じる部分もないわけではなかった
一番のイミフ場面は、耳が聞こえない女の子がジャッカルの風船を追いかけて即席足場まで出てきてしまうとこですね
行動ゆえの展開ではなく完全に展開のための行動となっていたのは非常に残念でした
あと貝沼くん周りは雑
盗撮を嗅ぎつけたのはどういう経緯なのか映画観ただけじゃわかんねえし、かなり身近な人間がとうとう極悪人の手にかけられたというのに、後処理がイマイチに感じた


エンディングの感情的、画的な美しさで恍惚としながら、もしコレがクリスマスに観れていたなら…と考えたらまたしても鳥肌が止まりませんでした
もー最高です
名言も多くてシビれるんだよな…麻婆食うか?は超名言
こんな面白い映画が国産で観れたことに一番感動を覚えています
岡田師匠ありがとう!!!