Godfather

海の上のピアニスト 4Kデジタル修復版のGodfatherのレビュー・感想・評価

4.7
午前十時の映画祭で久しぶりに劇場視聴した(2024/3/2)ので、以前書いた「イタリア完全版」のレビューに追記。

今回観て思ったのは、1900が船を降りなかった理由が少しだけわかるような気がしたこと。ピアノの鍵盤のように有限だからこそ人生は理にかなっているし、そこから無限の曲を生み出せる。
歳をとったからそう思うようになったのかもしれないけど...

-----「イタリア完全版」の感想 -----
「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレとエンニオ・モリコーネがやるんだから良いに決まってる!とワクワクしながら観に行った映画だ。普通そんな風に期待いっぱいで観る映画はがっかりさせらせることが多いのだが、これは期待通りのいい映画だった。

ティム・ロスは90年代にタランティーノの映画によく出てた時のイメージが強かったけど、この作品でけっこうイメージが変った。というか、これが一番のハマリ役なんじゃないだろうか。

「イタリア完全版」というのは今回始めて観た。ジュゼッペ・トルナトーレ監督の「完全版」と聞くとどうしても身構えてしまう。「ニュー・シネマ・パラダイス」完全版のようにまるでオリジナルとは別の映画になってたらどうしよう... と心配したが、これは全体にちょっとずつシーンが追加されてるだけで、大筋は変わらないようで安心した。どっちが好きかといえばやっぱり当時劇場で観たインターナショナル版の方かな。トルナトーレ監督は完全版になると説明過剰になるような気がする。

1900は一人廃船に取り残されてどうやって生活してたのだろう...というのは唯一脚本のおかしなところで、これは完全版をみても説明されることはなかったが、見方は少し変った。
もしかしたら1900はもうとっくに亡くなっていて、マックスが廃船の中で再会したのは1900の亡霊、もしくはマックスの見た幻影だったんじゃないかって気がしてきた。そう考えると辻褄があう(?)

1900とマックスが最初に出会い、ストッパーを外したピアノでボールルームの中を転がり回るあたりから、ずっと夢の中にいるような陶酔感があるんだよな。楽器屋の店主もなかなか信じなかったように、本当の話なのか「物語」なのかどっちつかずの幻想的な空気感がずっと続く。多少の脚本の矛盾が気にならないのはそのせいかも。

劇中で1900が作ったことになっている多種多様な音楽を実際に書いているモリコーネの才能もすごい。メインテーマもいいが、船内でアコーディオン持った農夫と出会うときに弾いてる、まるでラヴェルのピアノ協奏曲のようなリリカルな曲が特にいい。あれは1900が一目惚れした少女の正体に気づくシーンでも流れるけど、あのシーンはほんとにエモい!
それにしても「少女」のシーンは記憶してたよりずっと後半なんだな。

それにしても、1900が下船直前に心変わりしたのはなぜだろう。海の声を聴きたかったんじゃないのか。それは再会シーンでの彼の告白を聞いてもいまいち釈然としなかった。「海の上のピアニスト 船から降りられない理由」で検索すればいろんな人の解釈で溢れているようだが、いつか自分で納得できる日が来るのを待つとしよう。
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