リンコロシネマ

海の上のピアニスト 4Kデジタル修復版のリンコロシネマのレビュー・感想・評価

5.0
【僕の音楽は渡さない】

『ニュー・シネマ・パラダイス』の巨匠ジョゼッぺ・トルナトーレ1998年監督作品『海の上のピアニスト』が劇場公開されているのを知る。

上映劇場を調べてみると静岡県東部地区では“ららぽーと”内のシネマサンシャインで上映されているた…しかも3/28まで!これは行くしかない!ということで早起きして行ってまいりました。

船の上で生まれ育ち生涯1度も陸にあがることなく死んでいった天才ピアニスト“ナインティーン・ハンドレッド”の生前のエピソードを盟友であるラッパ吹き(トランペッター)のマックス・トゥーニーが中古楽器屋(今でいうハードオフw)の店主に語っていくという物語。

原作はイタリアの劇作家アレッサンドロ・バリッコの独白劇(戯曲)『ノヴェチェント』。つまり実話ではなくフィクションである。

ナインティーンは船を降りたことがないのだから演奏シーンは全て船の上で行われる。例えば大シケの船の中、セレブのダンスパーティー、ジャズを作ったとされるジェリー・ロール・モートンとのピアノ対決などなど。

そのエピソードのひとつひとつが印象深いのだが、中でもセールスやネームバリューにまったく興味のなかったナインティーンが生涯1枚だけレコード(SP盤)を作った話が秀逸。

レコーディング機器を船に持ち込んでダイレクトカッティング(生の演奏をそのままレコードの溝に刻むという手法)でレコーディングされるのだが切ないエピソードと、この世のものとは思えないくらい美しいメロディーに涙がとまらなかった。

ネタバレになるので詳しくは書かないが…エンニオ・モリコーネの音楽が最高に良い!!!音楽を聴くだけで早起きして劇場に足を運んだ甲斐がある。音楽やピアノが好きとか関係なく観てほしい。