昼行灯

水俣曼荼羅の昼行灯のレビュー・感想・評価

水俣曼荼羅(2020年製作の映画)
4.5
被害者は何十年経っても当事者なのに、国にも県にも当事者意識を持った人間は一人もいない。いくら被害者たちに弾劾されても、みんな「ハズレ役を引いたな」という顔でお茶を濁すばかり。県も国も、組織がデカくなるほど実体というものが無くなっていく。そんな実体の無いものに喧嘩を売ることの難しさ。手応えのなさ。被害者との温度差が、闘いを半世紀以上に引き延ばす。

一方で映し出される闘争前後の被害者たちの表情。恋バナもすれば冗談も言う。人間の振り幅の広さ。一つの公害問題を15年以上追い続けることで見えてくるもの。数十年前、高度経済成長の中で下されてきた政治的判断と、その先にある悲劇が招く人間模様。まさに曼荼羅。
昼行灯

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