こたつむり

木曜組曲のこたつむりのレビュー・感想・評価

木曜組曲(2001年製作の映画)
2.4
♪ 太陽が沈んで ボードレールで眠れない 
  眩しくて 眩しくて

大好物の“密室劇”と耳にしたので鑑賞しました。…が、よく寝なかったなと思うほどに起伏がなく。2時間近い尺は“冗長”の極みでした。

やはり、密室劇の醍醐味は知的な興奮。
喜怒哀楽の感情から精緻な理屈まで、人間の内面に踏み込んで描いてほしいのです。しかし、本作の場合、表層を撫でる場面が多く、時折挟み込まれる演出にも首を捻りたくなりました。

また、台詞に文語体が目立つのも微妙。
原作は恩田陸先生の小説ですが「筆を入れずに脚本化したのではないか」と疑いたくなるくらいに硬い雰囲気なのです。21世紀の作品ですからね。「○○だわ」という言い回しには違和感しかありません。

だから、女優さんたちもまるで人形のよう。
定型句ばかりの脚本では“凄み”を出すのは難しいのでしょう。ただ、そのハンデを覆してこそ名女優…というのも事実。鈴木京香さんの“素の顔”を感じるような可愛らしい表情は最高でした。

そして何よりも浅丘ルリ子さんですよ。
もうね。存在感が違います。過剰な物言いをするならば、彼女に始まり、彼女で終わる作品。化粧の濃さも合わせて“狂気”を見事に振り絞っていました。

また、深夜に観ると確実にお腹が空く場面も。
肉とか肉とか肉とか。鍋とか鍋とか鍋とか。
「ええい。今から食べに行くぞ!」と気勢を上げたくなるのは…お腹回りが気になる今日この頃、なかなかツラいものがありますね。

まあ、そんなわけで。
良い部分もありましたが悪い部分が目立つ…。
小説の良さを映像化しきれなかった…そんな作品でした。

文学を描きたかったのか、ミステリに仕上げたかったのか…迷いがあったのかもしれません。前者ならば踏み込みが甘いし、後者にしたかったのならば、あまりにも矛盾が多いので駄作と言わざるを得ないのです。ちなみに仕上げたのは『昭和歌謡大全集』を仕上げた篠原哲雄監督…なるほどなあ(意味深)。
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