YasujiOshiba

アンジェラのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

アンジェラ(2002年製作の映画)
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シチリア祭り(13)

パレルモのバッラロー(Ballarò)市場の近辺が舞台。ロベツタ・トッレが、まだパレルモに住んでいたころの映画。前作のふたつのミュージカルからすっかり調子を変えた。

ダニエーレ・チプリーのカメラは、古代ギリシャから蘇ったようなドナテッラ・フィノッキアーロに憑依する。映画デビュー作だけど、本人は弁護士と演劇の二股をかけていた才女。その存在感。サンダンス映画祭にも東京国際でも、観客を魅了するのもよくわかる。

前作ふたつに続いて音楽も良い。アンドレア・グエッラは、あの作家にして映画脚本家のトニーノ・グエッラの息子。そのモダンなジャズのようで、それでいて絡んでくるようなリズムと旋律が、映像のそこを抜く。

揺れるカメラに酔いながら、パレルのの街並みに入ってゆき、パレルモの女のほとんど理解しがたい気持ちのリアルに触れさせてくれる名作。

ただ、この話には続きがある。トッレ監督は、けっきょくその暴力の闇に耐えられなくて、この街を離れることになる。この作品は、その直前の、まだパレルモに魅かれながら、闇に触れようとするミラノから来た眼差しによる、ドキュメンタリーと言えるのかもしれない。
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