バンバンビガロ

ザ・フラッシュのバンバンビガロのレビュー・感想・評価

ザ・フラッシュ(2023年製作の映画)
3.5
元来ヒーロー映画というものはヒーローが誰かを救い、悪と対峙する物語であったと思うのだが、現代のヒーロー映画はそうしたヒーローをヒーローたらしめる資質とは無関係にヒーロー自身を問題を描く物語が増えてきているように感じる。
それは何かしらのメンタルヘルス的な問題を抱えるヒーローが映画の中の出来事を通じて自分自身が救われるという形式をとることが多くて『アイアンマン』あたりからそうした傾向はあって直近の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』もそのような作品であったと思う。
そこで本作『ザ・フラッシュ』はそうした現代ヒーロー映画の極北のような映画で、明確なヴィランや助けるべき人々は存在せず、事件のきっかけも自分自身であり、徹頭徹尾主人公であるバリーが自分と向き合うことを主眼としてデザインされている。自身のトラウマとなった事件を変えるために過去に戻った主人公は、そこでありえたかもしれないもう一つの自分と出会い、ともに行動する中で、最終的に現在の自分を形作っているはずの過去を受け入れることを選択し、一部を除きすべてをなかったことにして物語は終わる。完全なマッチポンプ映画で主人公自身の問題から始まって自身の問題を自分で解決して終わるだけというヒーロー映画としてはかなり歪な構造になっているようにも感じる。
主人公の成長を描く映画としては非常によくまとまっていて、感動もできる。しかしここまで個人の物語として内に閉じたヒーロー映画というのもが成立してしまうということに驚く気持ちもあった。 
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