鈴木ピク

ザ・フラッシュの鈴木ピクのレビュー・感想・評価

ザ・フラッシュ(2023年製作の映画)
4.3
今のアメコミ映画が退屈なのは、観客だけじゃなく作り手もSFXやヒーローの存在に麻痺してしまっていたからだと思う。
本作、アンディ・ムスキエティ監督はぶっちゃけMCUにもいる全然珍しくないザ・フラッシュの能力を、まるで世紀の発明でもしたかのように無邪気に、全力の驚きをもってアイデアを注ぎ込んで撮っている。
その「描写することの昂揚感」に何より充てられてしまった。
ネタバレの宝庫である本予告を先に観てしまったファンは可哀想だが、ほぼ予備知識なしで観たので、ここまで「ユニバース」であることを脚本のツイストとして活かしてきたアメコミ映画もないだろう。サプライズのたびに喜んでいた。
主演エズラ・ミラーの現実での奇行がノイズになることが危惧だったが、なんというか、別ユニバースのバリー・アレンの幼稚な落ち着きのなさと奇妙に符号してしまい、しっくりきた。

その上で、ユニバースやタイムパラドックスにいい加減飽き飽きしてしまったのはもはや観客の問題かも知れない。
鈴木ピク

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