Omizu

ベイビー・ブローカーのOmizuのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
4.5
【第75回カンヌ映画祭 男優賞】
是枝裕和監督待望の新作。カンヌのコンペに出品され、エキュメニカル審査員賞と男優賞(ソン・ガンホ)を受賞した作品。

紛れもない是枝作品だった。前作『真実』も優れた作品だけどやはりヨーロッパとは少し合わない感じがあった。それに比べて本作は外国映画というのを全く感じさせない、『万引き家族』と同じくらいと言っていいほどクソデカ感情を抱かざるを得ない傑作だ。

疑似家族ものという点ではやはり『万引き家族』と共通していて、ヒューマニズムを重んじる作家性はまさしく地続きだろう。

なによりIU演じるソヨンが刑事に「生まれてから捨てるより生まれる前に殺してたほうがいいの?」と問うところは、『万引き家族』において安藤サクラが池脇千鶴に「生んだらみんな母親になるの?」というシーンと重なった。

ただ『万引き家族』においては刑事はあくまで「他者」として登場したのに対し、本作ではペ・ドゥナ演じる刑事は他者ではなく、そちら側も描き、更なる厚みを出すことに成功している。

演出に関しては文句なし。もう是枝監督に関しては言うまでもないけど、セリフで言うことと言わないことの塩梅が抜群。IUとドンウォンの観覧車でのシーンなど印象的なシーンも多い。

IUが後半言うことだったり、ソン・ガンホ演じる離婚した父としての男性側の問題も描いていて、「母親だけが悪いのか?」というのを回避していて流石だなと思う。

ただあえて言えばソン・ガンホの娘はあまりに唐突すぎるかな。ただあそこをもっと深く描いてしまうとダイナミズムが失われてしまうのでこれでいいんだと思う。

個人的には『万引き家族』のB面のような作品で、是枝監督の最高傑作更新と言っても過言ではない実に堂々たる作品だと思う。
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