ぶみ

ベイビー・ブローカーのぶみのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
4.0
赤ちゃんを高く売る、それだけのはずだった。

是枝裕和監督、脚本、ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナ、イ・ジウン、イ・ジュヨン等の共演による韓国製作のドラマ。
赤ちゃんポストに預けられた赤ん坊を売り捌くブローカーと、その母親や、ブローカーを追う刑事等の姿を描く。
裏家業でブローカーをしているクリーニング店店主をガンホ、ともにブローカーをしている赤ちゃんポストのある施設の職員をドンウォン、赤ちゃんの母親をジウン、彼等を追う刑事をドゥナとジュヨンと、韓国を代表する俳優陣が勢揃い。
物語は、裏の世界で暗躍するブローカーと事件を追う刑事という構図から、韓国得意のヒリヒリするようなサスペンスかと思いきや、そこは『万引き家族』で家族のありようを描いた是枝監督らしく、サスペンス色は薄めであり、養父母探しのロードムービーテイストで展開。
反面、『万引き家族』と通ずる部分があったせいからか、はたまた顔立ちが似ているせいか、母親役を演じたジウンが、途中から松岡茉優に見えてきたのはご愛嬌。
あっと驚くような出来事が起こるわけではないが、様々な出来事を経て、疑似家族のような連帯感が生まれてくる様は、前述のように、まさにロードムービーの醍醐味であり、果たしてこれはなんの話だったのかと忘れてしまうほど。
しかし、赤ちゃんポストという、正直何が正解かわからないテーマを扱っている事を時折思い出させてくれるため、その重さとガンホ等の笑顔に代表されるユーモアとが、どっちつかずにならずに、絶妙なバランスで保たれている。
特に、途中にある洗車のシーンが、その間合いといい、カメラアングルといい、何気ない場面ながら、一気に家族感が高まった瞬間として記憶に残ることに。
また、原題が英題も含めブローカーとしているのに対し、ベイビーを加えた邦題は、内容をイメージしやすく、これはこれで悪くない。
どうしても『万引き家族』と重なる部分があるのは気になるところではあるものの、監督の追い求める作風として理解することができ、何が正解かわからないテーマに対し、一つの解を見た気がする良作。

ワンオペは大変なの。
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