mimitakoyaki

ベイビー・ブローカーのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
4.5
大好きな是枝監督が、韓国で!この超豪華キャストで!作った作品なんて、楽しみすぎるじゃないですか!
1日目は息子と、2日目は夫と見てきました。

【以下、ネタバレ気味です】



CJエンタテインメントから始まり、初めのショットはパラサイトだし、のっけから興奮してしまいました。

犯罪に手を染めるなど、社会の規範に反する人達の、血のつながりのない擬似家族というモチーフは「万引き家族」と共通してるし、世間的に見れば「悪い人間」と糾弾されるような人を、その背景や傷や孤独とともに、彼らが持ち寄る優しさやあたたかみを描いているのも良く似ています。
そういった人たちの人間模様にとても魅せられました。

赤ちゃんを捨てたのに、赤ちゃんを売ろうとしてるのに、みんなで赤ちゃんを世話しながら旅をし、一緒に過ごすうちに、みんなが赤ちゃんや若い母親ソヨンの幸せを願うようになり、ただニュースで切り取られた一部を見て冷たく非難、断罪する事と対照的です。

捨てられた赤ちゃんと自分、ソヨンと自分を捨てた母親を重ねながら、だんだんと気持ちが変化し、自分自身や母親を許し肯定できるようになるドンスに涙し、赤ちゃんを世話し、大事にしてくれるサンヒョンやドンス、孤児のヘジンと過ごしながら、孤独を癒し、もう一度やり直そうと思えるようになったソヨンに涙し、ソヨンにも「生まれてきてくれて ありがとう」と言ってくれるヘジンに涙し、最後まで赤ちゃんを何としても守ろうとしたサンヒョンにも涙し、みんなそれぞれ傷ついてろくな人生じゃない孤独な人なんだけど、互いに孤独や傷を癒し合い、はからずも人生を変えるような存在になっていって、とても感動しました。

ほんとにキャストが最高!
ソンガンホはそれはもうさすがで、古いクリーニング屋のおやじ感がすごいし、おんぼろのバンの後ろのドアの閉め方ひとつも素敵!
赤ちゃんを風呂に入れるソンガンホ、ミルクを吐かれるソンガンホ、ホテルのソファで横になった時に向けた背中の哀愁とかたまらんです。

カンドンウォンも、ずっと抱っこバンドで赤ちゃん抱っこしてくれてて、その姿を拝めただけで有難い気持ちになるし、ソヨンに傷つく事言われた翌朝も、観覧車でも、ホテルで過ごした最後の晩も、あの話し方、表情、声…、思い出しただけで泣けてくる。

IUちゃんは、観覧車のシーンとかほんとに素晴らしかったんだけど、はじめの取引で、相手夫婦にケェセッキ連発するとこはマジ最高!
IUの口からあんなに悪い言葉がとめどなく吐かれるとは♡

そしてそして、赤ちゃんがほんとに可愛い!
縦抱っこでゲップする時も、スヤスヤおねんねしてる時も、物音にビクってする時も、眉毛描かれてエンエン泣きながら手足がパタパタしてるのも、可愛すぎてヤバい!
ペドゥナ演じる刑事の手を握るところとかね、演技じゃないんだけど、名演技。
ヘジンくんがすごく可愛がってるのも、ほのぼのするし、その溢れ出る愛情に胸がキュンとなるんですよね。
いつものことなんですが、今作でも是枝監督は子役の使い方がほんとに上手いなと思いました。

豪華なのはメインのキャストだけでなく、脇役もすごくて、いろんな役者さんがチョイ役で出るたびに、キャッ♡と言いそうになりました。

釜山のヤクザ、テホ役に「梨泰院クラス」でイジュヨンとも共演してたリュギョンスが出てたので、是枝監督も梨泰院クラス見てたって言ってたから、そこからのキャスティングなのかなと思って嬉しくなりました。

取引する夫婦役には、「はちどり」でヨンジ先生役が素晴らしかったキムセビョクと、精子が少ないと言われまくるイドンフィで、案の定やらかしてくれる大サービス。
赤い風船持ってるマヌケな姿を見てほっこりしました。

殺人事件を捜査する刑事にペクヒョンジン、部下には「私のIDはカンナム美人」でクズな先輩役が印象的だったオヒジュン。
ドンスが育った養護施設の園長には「マイディアミスター」でイソンギュンの弟役だったソンセビョクが!
是枝監督はマイディアミスター見てたからからかな。
笛吹くところ好き。
さらに、マイディアミスター枠から、パクヘジュンも!
是枝監督、マイディアミスター好きすぎるやろ!

そして、大好きなキムソニョンさん!
この作品でもお会いできるとは!
ほんとにチョイ役なんだけど、シッケ飲んでる姿がもう愛おしい。
大好き!
ほんとに、どれだけ良い役者揃えたん!と感心しました。

釜山から東海岸沿いに北上する旅。
蔚山、浦項、慶州、ソウル、仁川のウォルミドなど、地名は知ってても、距離感がわからないから、そこはちょっと残念でしたが、あのおんぼろのバンは、傷だらけでもなんとか生きてる彼らを象徴してるかのようで、すごく良い存在感がありました。

韓国の作品を見てると、養護施設や養子がよく出てくるので、韓国では多いのかも知れません。
ソヨンはサンヒョン達と出会ったことによって再生できたけど、出会わない人だってたくさんいるわけで、そのために社会は何ができるんだろうと思いました。

折りしも、アメリカでは中絶の権利が大きく後退することになり、産むか産まないかを自己決定することは大切な権利だという流れと逆行していますが、そういったリプロ保障とともに、赤ちゃんの命を救い守るため、困ってる独りぼっちのお母さんを救うための手立てをもっと充実させていく事も大事だなと思いました。

ソンガンホ 15作品目
カンドンウォン 8作品目
ペドゥナ 14作品目
イジュヨン 6作品目
イムセン 9作品目
オヒジュン 13作品目

18、19

追記:
この作品を見た後に、是枝監督も見てたという「マイディアミスター」を見直してみたら、驚きのつながりを発見しました。

この作品で養護施設長を演じたソンセビョクが、ドラマの中で、是枝監督の「誰も知らない」に言及し、親に置き去りにされた子ども達があまりに可哀想で、「俺があの子達を引き取って育ててやりたかった」というようなセリフがあったんです。
だから本作で養護施設長になったんだ!と思いました。

あと、ドラマの中の「ファイティン」という凡庸な言葉がとても印象的に感動的に出てくるのと、本作の「生まれてくれてありがとう」とも重なりを勝手に感じたりもしました。
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