ゆう

ベイビー・ブローカーのゆうのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
3.9
是枝監督真骨頂の歪な擬似家族が家族になっていく姿を描いた秀逸なストーリー。
サンヒョン、ドンス、ソヨン、そして恐らく追っているスジン刑事も含めて、みんな"真っ当な家族"というものから見放された境遇で生きている。
ストーリーの根幹はソヨンがこのベイビーブローカーの旅路?を通してまさに"母になる"ことであり、その過程でサンヒョンやドンス、スジン刑事の中にある"家族"というものへの絶望と蟠りを暖かく溶かしていくところにあるのだと思う。これが押しつけがましくなく絶妙な塩梅なんだよなあ、さすが是枝監督。
ウソンの里親が決まりそうな前夜のシーンは傑出した名シーンだが、あんな言葉を繰り返させて全く陳腐にならないストーリー構成力と画面力は卓抜しているね。

誰もが自分は望まれて生まれてきたと信じたいし、そして自分の子が誕生したならば、心からの祝福と感謝をもって幸福に暮らしていきたいと願うはず。でもそうはならないことばかりで、むしろそんな当たり前のこと自体が奇跡のようになっている今だからこそ。
たとえ歪に生まれて育っても、ものすごく幸せにはそりゃなれないかもしれないけど、それでもちゃんと誰かの大切な人にはなれるし幸せに向けて進んでいくことはできるんだね。
ゆう

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