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ベイビー・ブローカーのNMのネタバレレビュー・内容・結末

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

韓国での赤ちゃん売買のニュースを聞いてこの作品の存在を思い出し視聴。
登場する母親は男と話し始めてすぐにブローカーだと判断しているので韓国ではその存在は知られているんだろう。

割りと普通っぽい人が手を染めているというところが問題。しかも人の親。
もう一人も普通っぽい人で、自分自身も捨てられた身だというのにこのビジネスをしている。
しかしこういう二人だからこそやっているうちに心理が変化していく、というのが見どころ。

暗い社会派映画だと思ったらそれほど重すぎず観られた。あからさまなギャグシーンはないが、微妙に可笑しみのある雰囲気が多い。そもそもシチュエーションがシュール。
子どもが付いてきてしまった一行の様子や、ニセ夫婦の練習風景など絶妙。

とは言えちゃんと出産について考えさせられる。
育てたい。育てられない。自責する母親。
捨てた母親が無責任なのか。全ては父親が悪いのか。産んだことが悪いのか。産む前に処分するほうが偉いのか。
登場人物それぞれの倫理観があるので、少なくとも答えは一律じゃないと思うことはできるはず。
それとこの母親は、本人がした選択についてだけでなく他の人たちの八つ当たりで関係ない思いをぶつけられているのはかわいそうに思う。みな自分は正しいと思い込み、弱みのある人を見つけてこいつは悪いやつと決めつける。自分の経験からでしか判断しておらず、事情など想像もしない。

警察スジンの事情をもう少し見たかった。何か自分なりの強い思いやそれに至るトラウマなどがありそうだった。最後はそれをひっくり返す大きな決断をする割には理由が特に明らかにされてなくて気になる。
ドンスがどうなったかも含めてラストをもっと見たかった。2時間あるのでこれ以上は無理だろうか。

養護施設出身者は兵役が免除されることを初めて知った。服役中で時期を逃した人も。
兵役に行くのも大変だが、行ってないとバレると信用が落ちそうでそれも大変そう。一生ついて回る。

あと赤ちゃんの眉毛は濃いのが良いとされているのも。男の子だけかな。凛々しい、ハンサム、という扱いみたい。

港町釜山とその周辺が舞台で、景色も綺麗。海だけじゃなく山並みも広大。景色も相まってそのときの感情をわっと際立たせてくれる。


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釜山。暗い雨の夜。
思い詰めた様子で赤ちゃんボックスの前に現れた若い母親。
ボックスには入れずその前の床に置いて立ち去る。
迎えに来るというメモ付き。赤ちゃんはウソンという名らしい。
情報をつかみ見張っている警察の女性二人組。
一人は母親を尾行、一人は赤ちゃんを抱き上げそのまま誰にも言わず眼の前の赤ちゃんボックスに入れた。

中にいた牧師服を着たサンヒョンが受け取り、連れ帰った。
そこは教会の経営する施設らしい。
他に居合わせた職員はドンス一人。二人は組んでいる。

実際のサンヒョンは一人でクリーニング店を営んでいる。
鼻歌を歌いながらミシンを踏み、近所の人たちと親しげに挨拶しあう。
一見普通の人。
だが情報を掴んでいる昨日の警察は店を見張っている。警察が赤ちゃんをボックスに入れたのは泳がせて現場を押さえるため。

思いがけず翌日さっそく施設に母親ソジンが施設へ迎えに来た。
ここで大勢の子どもが育てられている。
だがその中にも息子はおらず、対応した職員に預けられた記録はないと言われる。
ドンスも知らんぷり。

警察に行かれては困る。
施設を出たソヨンに、ドンスから連絡を受けたサンヒョンが声をかけた。

家に呼び、ドンスも呼んで三人で言いくるめる。
迎えに来るというメモがあっては養子縁組リストから外され養護施設へ送られる、温かい家庭で育つべきだから我々が養父母を探してあげますと、諭す。
ソヨンは、ただのブローカーのくせにと不服そうだが、結局養父母探しに付いてきた。

クリーニング店に二人の男が来た。血まみれのシャツを持っている。
サンヒョンは彼らに賭けで作ってしまった多額の借金があるらしい。

三人と赤ちゃんの奇妙な旅が始まった。

警察二人は現行犯で捕らえるべく意気込んで尾行している。
特にチーム長のスジンはどうしてもデカいヤマを挙げたいらしく、犯罪をできるだけ大きくしようとし逮捕も急いでいる。刑事課のライバルにも負けたくないらしい。
部下のほうはただの個人の犯罪ではと思っているが、それを言うとスジンは怒り出す。本当は本人も分かっている。

現れた夫婦は赤ちゃんの顔に文句を付け値段を値切ろうとしてきた。
ソヨンは赤ちゃんに文句を言われて思わず夫婦を罵倒。
交渉決裂。

殺人現場。刑事課が捜査している。
撲殺された男。現場には女がいた形跡。

三人は養護施設に立ち寄った。
ドンスはここの出身。子どもたちが駆け寄りドンスを暖かく迎える。
運営している夫婦も子どもたちもけっこう明るく生きているようだ。

ドンスが捨てられたときも、迎えに来るというメモがあった。心の中では今も親のことを想っている。
だから子を捨てるソヨンのことを良く思っておらずずっと冷たい態度しだった。
喧嘩になり、ソヨンも言い返す。だが翌日謝った。
孤独を抱える身どうし。二人で窓の外を見つめた。

刑事課は殺人現場で売春していたのがソヨンで、逃げるのに邪魔だから赤ちゃんを捨てたと推理。
このままでは手柄のないスジンは、仲介する現場を仕込むことに。
ニセ夫婦を用意し、相場の倍で打診。
サンヒョンは怪しむ。

会ってみると夫婦だという男女の話がおかしい。
転売だと判断し、きっぱりと引き返す一行。
皆まるで何かを成し遂げたように満足げ。
赤ちゃんを売ればいいのではなく、本当に良い親を探すことに目的が変化している。

ソヨンのもとに電話がかかってくる。
電話の女性は、中絶する約束だった、赤ちゃんをこちらに渡して、と語る。
電話を切るソヨン。

スジンたちはソヨンが一人になったときに直接面会。
減刑するから協力しろと言うと、ソヨンは承諾。
その間もスジンはソヨンを仇でも見るような目つきで見据える。部下も不思議に思うほどソヨンに厳しい。

一行はホテルの同じ部屋に寝泊まり。
赤ちゃんの面倒を見る当番を決めたりして修学旅行のような雰囲気。
赤ちゃんが熱を出すとみんなで心配し危険をかえりみず病院へ行った。
礼を言うソヨン。
赤ちゃんというのはそういうものだからと返すサンヒョン。

ソヨンに電話してきた女性が刑事課に連絡。ソヨンの情報を渡す。
赤ちゃんは夫の子供として育てるつもりだと警察に語っている。

ソヨンはサンヒョンたちに、生まれなきゃ良かったと言われ赤ちゃんを奪われそうになり、抵抗して相手を殺した。今その人の奥さんが赤ちゃんを探してると告白。
しかし二人はソヨンが納得する相手を見つけてやろうと改めて決意した。

次の夫婦と面会。真摯な態度、赤ちゃんに優しい。
ソヨンが会うのは最後にしてほしいと言われるとソヨンは黙る。
一旦解散したあと一行は遊園地へ。
ドンスはソヨンと二人になったとき、赤ちゃんは俺たちで育ててもいいと話す。
しかしソヨンは、赤ちゃんを捨てた身だし殺人犯の娘にしたくないと語る。

それを聞いていた警察は、一番赤ちゃんを売りたいのは私たちのようだとついに気づく。
スジンはソヨンに、売りに行かず自首しても良いと提案。現場を抑えることを諦めてもいいと考えた。

その間サンヒョンとドンスは話し合う。
ソヨンは今警察に会っているはずだ、俺たちを売るだろう。
赤ちゃんを連れてソヨンを置き去りにした。

翌日、ドンスだけでもう一度夫婦に会う。
サンヒョンは途中で知人と会い別れた。
その現場に警察が踏み込みドンスは逮捕。
サンヒョンはそのまま行方知れず。

数年後。
赤ちゃんはスジンが引き取って育てていた。夫も子どもに愛情をそそいでいる。
ソヨンにも会いにこないかと手紙を書いた。
アルバイトで暮らしている様子のソヨン。あのときの一行の写真をいつも見ている。
その様子を同じ写真を持った男が影から見ていた。


ミル麺(ミルミョン)……冷麺の蕎麦粉が手に入らなかった朝鮮戦争中小麦粉で作られたのが始まりと言われる。釜山市内では冷麺店よりミル麺店のほうが多い。黄色味があって弾力のある硬めの麺。冷麺に牛肉が多いのに対しミル麺は豚肉が多く、水キムチは入れない。出汁スープが付いてくる。
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