みかんぼうや

ベイビー・ブローカーのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
3.6
是枝監督×ソン・ガンホ主演で話題になった本作。

“大人に振り回される子どもの運命” × “家族という枠組みの定義(血が繋がっているか否か)” × “社会問題を扱いつつ重すぎないエンタメ性” × “悪いことをしていても、その根底にある人が持っている優しさ”という、是枝監督の黄金の方程式がぎっしり詰まった作品ゆえの、安定の面白さ。

孤児と人身売買という社会問題に関する提起をしつつ、登場人物たちの優しさが入ることで「家族とは何か?」という是枝作品の一貫したテーマを受け手側に考えさせる。だけど、重すぎて考え疲れすることのない観やすさは、さすが是枝監督です。

が、個人的には「万引き家族」や「怪物」に比べると映画としてのパンチはだいぶ弱かった気もします。それは、舞台が韓国ゆえ、韓国の社会問題である人身売買が身近に感じづらい内容だったからなのか、それともヤクザ・殺人事件・売春など色々な要素が入ることで、話がいつもの是枝作品以上にドラマチックで作られた感があったからか。それとも、その展開を受けながら、なんともファンタジー的に綺麗に終わり過ぎたからか。

これは、“韓国マーケットでウケる”ということを狙った意図的な作りだったのかもしれませんが、いつもの是枝作品に比べると、エンタメ・ファンタジー性と社会問題・リアリティのバランスが自分好みではなかったように思いました。

とはいえ、韓国の孤児・人身売買問題にも関心を持つきっかけになり、エンタメ作品としても観やすい安定の是枝クオリティでした。
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