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私たちの青春、台湾のkamitのネタバレレビュー・内容・結末

私たちの青春、台湾(2017年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 「民主主義は難しい」という監督の一言が刺さる。単なる政治に対する諦念や冷評のつぶやきでなく、社会運動に身を投じた2人の友人を追い、政治を変えられるかもしれないという期待のもとでビデオを回し、結果として民主主義への希望と失望を味わった者の語りだからこそである。
 思想や哲学が政治の存在と当為を論じる間に、政治は人々の日常を支配してきた。あるべき民主主義という理念とは別に、民主政は今日も淡々と行われている。言葉のみが上滑りすることも少なくない。「民主」の意味を解するとは、それが抱える問題ともしかと向き合うということではなかろうか。
 古代ギリシャからさまざまな困難に遭いながらもしぶとく生き残った民主主義というプログラムの中身をもし調べられたとしたら、とてもきれいとは言い難い粗悪なコードが陳列しているに違いない。あまつさえ、それでもなお修正しきれていない数多くのバグが含まれており、その解決は当分望めないだろう。
 本作に美談を期待する観客は見事に裏切られる。理想がはかなく消えゆく後半、席を後にする観客もいた。しかし、監督自身が語るようにこの作品は政治ドキュメンタリーというだけでなく、青春を社会運動に捧げた若者たちの群像劇でもあるのだ。民主主義が絶えざる情熱を必要とするならば、それは青春そのものかもしれない。
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