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私たちの青春、台湾のeulogist2001のレビュー・感想・評価

私たちの青春、台湾(2017年製作の映画)
3.9
監督の撮影意図は結果的に想定外となったが、この2人を対象として選び、7年間を撮影し続けた事はまさに「青春」という時期の貴重で鮮やかな本質を切りとっていた。

二人とも現実では共にふつうの若者であり、ただ何かしらかの「野心」には満ちている。つまり「わたしは何者かになりたい」し、その資格があると確信(誤解)していくマインドだ。若い監督がなんとなく惹かれたのも恐らく(確実に)そこだろう。

案の定、ふたりはふとしたキッカケで政治的なグループや運動の波にのり、のしあがり有名になり、そして挫折する。

流れの中で観ていても両者には他者への目線が冷淡であるし(ある面そこがリーダー向き)、主役志向が強烈だ。承認欲求に満ちている。正直言えば、二人ともたまたま民主運動に関わってはいたが、体制側(中共側)にいてもおかしくはないし、そこで認めてもらえるような事があれば、間違いなく幸せなタイプだろう。

そもそも社会正義的なマインドはないのだ。まさに「政治的」な人間ではあるけれど、真の救済者やボランティアではない。

その意味ではふたりとも政治的に成功しなかったのは社会にとっては幸せなことだった。(勘違いしたリーダーほど民衆にとってはた迷惑なことはないだろう。そして残念ながら民衆は愚民にもなりやすく盲目的な「カリスマ」願望もある。さらに本作の監督もそうだとみているが、一度自分が信じたものは価値があるとつい思い続けてしまう)

日本の学生運動の歴史を眺めても似たような感性や構図が伺える。その点ではノンポリこそ、活動家と称する大多数の利己的な胡散臭さや意味のない集団催眠に本能的に気がついていたのかもしれない。

「我こそは神なり」などと嘯く輩にろくな奴はいない。(ふたりが欲望のコントロールが出来ず極度の肥満であったり痴漢常習者であったのはまさに直喩としか感じられない)

というような事を誰かがコメントしてたが、本当にそうなのかな?

付記。
香港の周庭さんもちらりと映ってた。同じ穴のムジナだな。
また私は一部の真のリアリストたる政治家には拍手を惜しみません。もっとも潔癖過ぎる政治家は大業を果たせず暗殺されるか失脚するのが世の常⁈
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