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私たちの青春、台湾のodyssのレビュー・感想・評価

私たちの青春、台湾(2017年製作の映画)
3.3
【どこで挫折するかの違い】

日本の戦後の大衆的な政治運動は挫折の連続だった。
いちばん盛り上がったのは60年安保だろう。デモ隊が国会を取り巻いた。
60年代末の学生運動も、荒れに荒れた。東京大学と東京教育大学(現・筑波大)の入試がそのせいで中止になった。
でも、運動は政府を転覆させるところまでは行かなかった。

振り返って見れば、戦前だってそうだった。
5.15も2.26も、最終的には政府がクーデターを抑えた。
つまり、日本は当時から先進国で、クーデターで簡単に政権がひっくり返るような国じゃなかったのだ。

これは、戦後、「楯の会」を作るなどして政治運動にのめり込み、最後は自衛隊の建物で自決した三島由紀夫が、自衛隊に体験入隊した際に、冷徹な自衛隊員が三島に語ったとされる認識だ。

・・・前振りが長くなったけど、台湾のドキュメンタリー映画である。
台湾では学生運動が高揚して、政府に直接的な影響を行使するところまで行ったという事情が、この映画を見ると分かる。

ただし台湾については或る程度予備知識を持っておいたほうが鑑賞にはいい。

あと、問題は「成功したあと」である。
学生運動に成功した人間が正式に議員に立候補するのだが、意外な落とし穴が・・・

それから、この映画のもう一つのポイントは中国本土と台湾の関係である。
本土から台湾に留学している女子学生が登場する。
当然ながら本土では学生の政治的な活動は抑えられている。
だから、彼女にとって台湾の学生たちの運動はいわば目からウロコだった。
そして政治に目覚めた彼女は大学の自治会役員に立候補するのだが・・・ここにも落とし穴が。

台湾の学生たちがかかえる複雑な事情を学ぶことができる映画。
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