ぬ

私たちの青春、台湾のぬのレビュー・感想・評価

私たちの青春、台湾(2017年製作の映画)
4.0
(ドキュメンタリー内容に触れるのでネタバレと感じる人もいるかも?)

台湾のIT大臣オードリー・タン氏の本に映画の名前が出てきたので観てみた。
台湾の背景を知っていないとなかなか難しいのではないかと思うので、ネットや本などで事前に流れなど把握しておくとわかりやすいと思う。
国の大切なことを決める国会がブラックボックス化したことで、「国会が機能しないのなら、政治家が仕事をしないのなら、自分たちが国会で審議をする」と、最後まで「非暴力」で国会を占拠し、最終的に要求を決め院長との合意を果たした、つまり国の政治を動かした、"ひまわり学生運動"、そしてその運動の中心人物である陳為廷と、中国からの留学生、つまり大陸出身者である蔡博芸を追ったドキュメンタリー。

私は特に蔡博芸に非常に興味を持ったのだが、とにかくマジで頭がいい人という印象…
素直で、おかしいことにはおかしいと言い、名前も顔も出して活動して、気になることに積極的に参加し、感動屋さんで、とても真っ直ぐな人で感動した。
書けば書くほど、日本にこういう人がいたら出る杭として打たれまくるんだろうなと思えてしまう、中国ではそれ以上なのだろうけど…(そう思うと中国が母国でありながら、こういう活動してる彼女はやはりすごい)

オードリー・タン氏の本は日本語に訳されているものはすべて読んでいて、それらの本を読んだりした印象として、いまの台湾の政治は透明性、インクルーシブ、国民からの意見を広く受け入れるシステムなどを重んじているようだ。(恥ずかしげもなく黒塗文書がデフォルトの国に生まれ育った身としては、うらやましい限り)
だが、ひまわり学生運動が起きる以前は、台湾の国会はブラックボックス化していて、日本と同じく中高年に比べ若者は政治への関心が低かった。
そこから運動が起きて、運動に中心人物として参加していたタン氏(それこそ、運動の透明性のため、占拠された国会を、国会の外にいる人々へ生放送するための環境構築を行っていた)が、国のIT大臣になるとは…まさに日本では信じられないことだと思う。

日本の政治がおかしくなっていってる状況で、自分含め日本の若年層はこんなふうに動けるだろうか?と言う視点で見ていた。
民主主義を守ろうとする台湾の人々が、香港の人々と連帯し、お互いに支援し合っている様子が印象的だった。
私は日本はもっと他のアジアの国々は連帯して行くべきだと思っているが、日本はアジアの国であるという帰属意識がまず低すぎるというのがあるよなぁ…
と嘆いているより、自分ができることを草の根的にでもやっていくしかないと強く感じた。

また、ひまわり学生運動の中心として動いていた人物による痴漢スキャンダルについても、割とストレートに描かれていて衝撃を受けた。
彼の政治的な活動は台湾の学生運動に大きな功績を遺したというのも事実であろうが、何にせよやったことは控えめに言ってクズであると言える。
(痴漢を繰り返した理由について、標的となった女性たちについて「根本的に人間だと思っていなかった…」みたいなこと言ってて、ショックだが性犯罪者の頭の中では実際そうなんだろうと思った)
組織のリーダーとしての資質と個人としての人格はまた別ものであるし、人権をまもるような政治的な活動をしている人間でも、ジェンダーの問題、性的なこととなるとバグるみたいなの、めちゃめちゃ"嫌なあるある"だなぁという感じ。

映画としても面白く、政治的な映画としてだけでなく、10代から20代へ成長していく過程、ときに楽しく同志たちと切磋琢磨し、熱く語り合い、それからバラバラになってひとりひとりが歩いていく様子を捉えていて、まさに青春物語。
いやほんとに、こんなにも国の問題についてパッショネイトな学生さんたちに驚かされる、自分が10代とかのときこんなに政治に興味持ててなかったよ…
ぬ