ようすけ

競争のようすけのレビュー・感想・評価

競争(2014年製作の映画)
3.5
黄色いポールがゴールというのが鍵か。

恨まれているパブロに元社長が自分のその後の不幸な身の上話を捲し立てる。

金も家族も失った元社長がやっと家から出て走った記念すべき日。ずっと家にこもったのはどん底だったから、ということは、外で走っている時点で何かしら変化はすでにあったのだろう。



パブロはうっかり女性と子どもを「家族同然」と言っているな。そこで気がついた。もう一度見れば分かる。パブロは初めから最後まで嘘は一つも言っていない。成功者を羨む気持ちが自分の目線を歪ませて相手を大きく醜く見せている。まるで経営者として起業して社長として成功をおさめたような…………。

運転手として起業はしているし、自分の会社である。クルーザーに乗っているのは妻とかわいい娘とこちらの妄想は膨らむけれど、実はパブロは「家族同然」と家族ではないと言っている。一泊の小旅行に行くのも(運転手としてだが)真実。そして、仕事を紹介したのも約束は守っている。

実は最初から騙しも何もない。嘘もない。観ている自分や元社長が妄想を膨らませているだけだった。

元社長の取り戻した気力。最後は明るく期待がもてた。いや、騙されていると思って「あのやろう」と言っているが、何度も言う。騙してないって。あんたの目が歪んで勝手に解釈していただけだ。

競争して横を走る相手を見るのではなくて、ゴールめがけて気力を振り絞れ。間違った競争心は相手を見る自分の目を曇らせる。相手を大きく、醜く考えてしまう、と勝手に解釈。

人間の心理を逆手にとって結果として騙されるなかなか良くできた作品だと思う。
ようすけ

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