YasujiOshiba

NIMIC/ニミックのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

NIMIC/ニミック(2019年製作の映画)
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MUBI. 23-143. 12分のショート。やはり言葉にハッとなる。地下鉄のなかマット・ディロンが声をかける。「Excuse me」。声をかけられたのはダフネ・パタキア。

ディロンの「Do you have the time?」(時間を教えていただけますか?)という問いかけに、彼女の目は泳ぎ下を向くが、やがて笑みを浮かべて瞳を輝かせ、ディロンと同じセリフ「Do you have the time?」を繰り返す。

これだけで不気味。さらに不気味なのは、それが追いかけてくること。まるで『It follows』(2014)さながらに、ダフネはマットを追いかける。追いかけるだけではない。いつのまにか、彼が買った花と同じ花を持ち、彼が取り出したカギとおなじカギを取り出して、「父」であるマットを「真似する」(mimic)ことになる。

そう、彼女の役名は Mimic と記されている。完全に真似するわけではない。そもそも女性だし、チェロだって上手くない。それでもマット・ディロンの「父」を真似して入れ替わる。では、入れ替わられたマットはどうなるのか。もはや何者でもない。だからタイトルは「Nimic」。ルーマニア語で「何もない」という意味だという。
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