苦しい記憶を、爽やかに語る。
ナチスに目をつけられたユダヤ人一家が、ベルリンからスイス、パリを経てイギリスまで亡命する話。悩みながらも折り合いをつけ、なんとか前に進むアンナや家族の姿が清々しい。それに、どんなに苦しくても相手への気遣いを忘れない姿もいじらしい。
印象的だったのは、一つの街を去るごとに「さよなら、〇〇」と、ひとつひとつにお別れを言って回っていたこと。アンナにとって忘れたくないものとお別れする、次へ進むための大切な儀式だったんだろう。可愛らしいけど、胸が苦しくなった。
最後に児童書が原作だからか、やや清すぎでは…は否めない。それでも明るく描くのは、読者である子供達にトラウマ的ではなく歴史に興味を持ってほしいという側面もあるんじゃないかと思う。好きな映画。
