叡福寺清子

ヒトラーに盗られたうさぎの叡福寺清子のレビュー・感想・評価

ヒトラーに盗られたうさぎ(2019年製作の映画)
3.2
1932年7月の国会選挙で国民社会主義ドイツ労働者党が国会の第一党となり,翌年1月にはヒトラーが首相任命された,そんな時代のベルリン.かねてから,ナチス党やヒトラーに批判的だった劇作家兼演劇批評家であったアルトゥア・ケンパーさんは,加えてユダヤ人である事からいよいよその身が危ういと知り,奥様のドロテアさん,ご長男のマックス君,そして妹さんのアンナさん共々スイスに亡命いたします.本作は,御一家がイギリスに流れ着くまでを描いた物語でございます.こんばんわ.三遊亭呼延灼です.

絵本作家ジュディス・カーが少女時代の体験を基につづった小説が原作とは知りませんでした・・・っていうかジュディス・カーさん自体本作で知った次第です.ほら,あたくし毒両親に育てられましたんで,絵本とかそういう世界とは一切無縁なまま幼少期を送った口でございます故.
それはともかく,でもなんか・・・こういっちゃあなんでございますが,迫害されたわけでもなく,経済的困窮が原因で流転してるじゃんという感想が先立ちまして,胸を打ち感動作とは,私の目には映りませんでした.流れ着いた先々で,イジメはあったもののそれもわりとアッサリ,同様に少女達の交流もアッサリで,作品自体肩透かしを食らったような印象となってしまいました.

そんな中にあっても奥様のドロテアさんのチャーミング,特にパリでちょっと高そうなケーキを頬張るシーンのキュートさには,思わず「惚れてまうやろぉ!」って愚息が叫んでしまった次第でございます.

途中,犬のように扱われ自殺した教授や,失意のうちになくなったユリウス叔父さんの方に同情を寄せてしまうのは,作品としていかがなものなんでしょうね.