紅茶

ヒトラーに盗られたうさぎの紅茶のネタバレレビュー・内容・結末

ヒトラーに盗られたうさぎ(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「おちゃのじかんにきたとら」
というわたしの大大大好きな絵本の作者、ジュディス・カーの自伝的物語の映画化。
絵本は平和な母娘の「おちゃのじかん」に突如大柄の「とら」が訪問してきて、家の中の食材すべて食べつくしてしまうという、それだけ聞くと恐ろしい話だけれども、要なのは絵がライトで明るいこと、母娘がまったく動じずむしろ歓迎してもてなしているところ、その、おそろしいトラへの母娘の応対のギャップがユーモラスで、読み聞かせでも多くの子どもにウケるんだけど、、
そして、ジュディス本人は「無関係」と断じていることなんだけど、
このトラはジュディスのナチスにまつわる経験から生まれたものではないかとやはり感じてしまう。
そしてまたジュディス本人の意思までそこに感じる。あんたたちはわたしたちの何をも奪えなかったんだよと。食材(持ち物、住処、それまで持っていた日常のすべて)すべて奪おうとも、わたしたちの明るく楽しい生活は何も奪えなかったんだからねと。

話は戻って映画の話。
タイトルからもう予告されているので、そわそわして観ましたが、
やっぱりうさぎを失ったのは胸が痛んだ。
ヒトラーが政権を取った途端に取り押さえられた家財道具一式。
選挙前に亡命していたのは、サウンド・オブ・ミュージックのトラップ一家の大変さを思うと何よりだったと思うけど、亡命ができて命は助かっているとはいえ、ほぼ身一つ、生活費を確保することだってままならないし、子どもたちは慣れない学校と、言葉が通じるのは助かったとはいえ、都会のベルリンとは違う男女の差(リアル!)などなど、やはり「家ではない」ことがひしひしと。日常を奪われること、追われる身であることのかなしみと不安とが身に迫る。
それでもどこか強い主人公。やっぱり「おちゃのじかんにきたとら」のタフさを感じられて、そこにすがって観続けた。
「君の心には光が灯っている
守るんだ」
ユリウスおじさんの台詞がすばらしい。
何処ここでも絵を描き続ける主人公、色鉛筆は荷物から外せなかった主人公、彼女の光はたしかな奪えず、彼女は自分の光を守ったんだな。

「神様を信じる?」
「いや
唯一信じるのは感謝だ
感謝を忘れたものは負ける」

関係ない(なくないけど)けど主演の女の子も(ママも)すっごい美人。主演の女の子、将来ジュリエット・ビノシュ(似てるんよ)超えの女優になってほしい。強い瞳に賢そうな顔立ち、この子が主演でほんまによかった。
そしてお父さん役、「おちゃのじかんにきたとら」の、おとうさんそっくり。

限られた尺のなかで、部屋部屋や通りや家やに別れを告げるアンナを丁寧に撮る監督、カロリーヌ・リンクやん!!よかった。


それにしても、
わたしの子どもはお気に入りのお人形を、気がすむまで全部持っててほしいよ。
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