かずね

ヒトラーに盗られたうさぎのかずねのレビュー・感想・評価

ヒトラーに盗られたうさぎ(2019年製作の映画)
4.2
題名から重たい映画かなと印象を受けてしまって、見始めるまでになかなか時間がかかってしまった作品。
でもこれは「苦労を繰り返しながらも、亡命に成功したユダヤ人家族」のお話なので、直接的な戦争描写やホロコーストの描写などもなくて、覚悟していたよりは良い意味であっさり観ることができた。

反ナチスの立場を公にする父をもつ裕福な一家が、選挙でナチスの連立政権が始まる直前にベルリンを出てスイスの田舎町→パリ→最終的にはイギリスと住む場所を移す。10歳の女の子アンナの視点で進んでいく。
実在の絵本作者が少女時代を自伝的に書いたものがもとになってるそうで、新しい環境にその土地の言葉もままならない状態の幼い兄と妹が順応していくの本当に頑張っていたし実際すごく優秀な子達だったんだろうなぁ。
母も父もそれぞれ人間味に溢れていて、ストレスが出てしまうシーンなんかもあるけれど観ていて不快なほどではないし良い家族だった。亡命の大変なところは環境の変化だけじゃなくて、お金の問題もあって生活レベルをだんだん落としていかざるを得ない描写が丁寧でリアル。
スイスの田舎と都会のパリでは街や学校の雰囲気も全然違っていて、テンポよく文化の違いも楽しめた。

とはいえ、迫害に関する前提知識があると、あと数日行動を起こすのが遅ければ、一歩間違ってたらもしやと悲しい運命がいつも隣り合わせであることは作中のはしばしで察せられてはっきりと戦争映画でもあった。
主人公のアンナと同じくらいの年齢の子がトラウマ描写なしに観るにはすごくちょうどいい作品だなぁとも思った。

子役たちの演技がとっても素敵だったので、またいつか他の作品にも出てきてほしいな。
観てる途中で、もしかして父の役者オリヴァー・マスッチさん「ファンタビ3」のフォーゲル!?と気がついて調べてみたら「帰ってきたヒトラー」でヒトラーを演じてた方でもあるってことがわかって衝撃が…いろんな立場を演じておられる…
今作の父役が一番見目麗しい!
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