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ヒトラーに盗られたうさぎのchのレビュー・感想・評価

ヒトラーに盗られたうさぎ(2019年製作の映画)
3.8
2024/03/01

ナチスが連立政権としてドイツ議会の過半数を獲得する1週間前からスタートするお話。

いわゆるホロコーストの話かなと思って見はじめたけど、これは「亡命に成功した女の子の亡命生活」に焦点を当てている。

ドイツで裕福な生活を送っていた一家が、
ナチスの台頭を機に🇩🇪→🇨🇭→🇫🇷→🇬🇧へと亡命していくお話。

物語の冒頭、パーティーで「物乞い」の仮想をしていた主人公のアンナが亡命生活を通して徐々に貧しくなり、「物乞い」まではいかないけど、それに近い行為をした時、胸が締め付けられた。

ナチスドイツがその後どうなったかを知っている身からすると、このタイミングで亡命して、こんな生活が送れてるだけで凄く幸せな家族だとは思う。でも、その人の抱える辛さってその人にしかやっぱり分からないもので…。
何より主人公の10歳くらいの女の子が言葉や文化の通じない場所にポンッと急に置かれて、何も分からないし、自分の常識が非常識になる。
そんなのやっぱり苦しいよね…と思いながら見ていた。

彼女は長生きして亡命できて、幸せな方だったよなんて言われてしまえばそこまでだけど、私が10歳で言葉も分かも通じない場所にポンッと置かれてあんな強くは生きられないと思った。

「お家に帰れるまでつけるの!」なんていってた手作りのカレンダーを破り捨てるシーン…。
アンナが良くも悪くも諦めを知って少し大人になってしまったシーンのように感じて苦しかった。

亡命場所が変わる度にしている「さようなら」の挨拶が国によって言葉が変わっていくのが、時間と距離がどんどん過ぎていくのを感じて切なかった。

○○人だからってどうしてもひとまとめにしてしまいがちだけど、それ以前に私たちはみんな同じ人間なんだよなと改めて感じる作品だった。
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