ろく

花と沼のろくのレビュー・感想・評価

花と沼(2020年製作の映画)
4.5
「蓼食う虫も好き好き」という言葉は蓼を悪い意味で使っている時点で失礼じゃないか。

あああ、大傑作。なんだ最後の展開なんかキモキモキモキモなのになぜか涙止まりませんから。もうとにかく城定の優しさが身にしみる。それは近年のイケメンばかりでる日本映画に対する思いっきりなアンチだったりするんでニヤニヤしながら、お前もその「キモ」の一角だからの自己弁護だろと思い、でもでもそれでもこの映画で救われるんですよ、ええ皆さん。

取乱したんで冷静になると結局「人」を好きになるのに客観は必要ないってことなのよ。あくまで主観、そしてその主観に対し「それっておかしい」って言っちゃダメなんだ。意外と昨今の多様性をしっかり自分のものにしているじゃん、城定。

でもね、その一方でそれはおかしいって言う「世間」があるわけ。「世間」の中でしか生きられない自分がなかなか正しいって言えないじゃない(阿部謹也)。だからこそ思い切った解放が必要か、それとも闇に混濁するか。この映画では基本闇なんだけど、そこからあるきっかけで「解放」が来るんだ。その時城定映画は走る。走る走る走る走る。走って僕らは解放に向かうの。その解放は世間のコンセンサスとは何も関係ない。そこにあるのはしかも認められる必要もない。さらには解放は「少しだけ」でもいい(だって世間に背いて生き行くのは不可能だから)。ほんの少しだけ「やりたいことをやってみろ」。この背中を押される感じに涙が止まらないんですよ。

艶笑としてゲラゲラ笑わせていただきました。笑って泣いてちょっと感動して。最後のどうでもいい歌にまで感動して(作詞作曲城定!)。明日から生きる元気もらいました。

アマプラでまさか配信されているとは。最近はもっぱらU-nextとネトフリだけ見ていたからなぁ。すまんアマプラ。見くびっていたよ。
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