にくそん

劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族のにくそんのレビュー・感想・評価

3.9
ヘタレの息子(成猫)が帰ってきて母猫が迎え入れるのとか、独り立ちがうまくいかない弟猫を兄猫が構ってやるのとか、お父さん猫と少年のおでこごっつんとか、じんわり胸が温もる。カーショ、かわいいなあ。ネコ歩きの猫の名前が脳にしっかり刻まれるの、私には珍しいことだ。ドキュメンタリーでよくこうも猫たち家族の劇的な場面を捉えられる。全然、退屈しない。さして劇的でもないシーンを、説明でクライマックスのように見せているところもあるんだろうけど。

猫の後ろにその場所らしい生活や風景があるのも、ネコ歩きのよさ。気温の低そうな北海道の牛たちの白い呼気が神々しい。ドキュメンタリーなんだけど、画面が緻密に設計されたみたいにアーティスティックな瞬間がいくつもある。ミャンマーの水上の村になると、水色のオールだとかオレンジ色のパンツだとか、色使いから違っていて異国情緒がそれはもう。「スクールボート」で学校へ通う暮らしなんて、想像したこともなかった。面白い。

中村倫也さんのナレーションもしっくりきた。私はテレビシリーズだと相武紗季さんと山田孝之さんが好きだけど、彼らに共通するのは適温っていうことかもしれない。岩合さんが中村さんに「猫たちのお兄ちゃんになってください」と言ったそうだけど、確かに、猫たちの親戚ぐらいの近さで、崇拝のような姿勢にはならず、もちろん見下したりもせず、温かくっていうのがいい塩梅なのかも。

劇場版第1弾より第2弾がさらによかったので、第3弾があったらまた観に行ってしまうと思う。コロナ禍の前みたいに海外ロケができる環境になるのはいつだろう。
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