フジタジュンコ

僕の名はパリエルム・ペルマールのフジタジュンコのレビュー・感想・評価

4.5
なんちゅうもんを見せてくれたんや…
なんちゅうもんを……

「美味しんぼ」の京極さんよろしく、滂沱の涙、そして大量の鼻水を恥ずかしげもなく流してしまいました…なんちゅう映画を作ってくれたんや……

冒頭から不穏でずっとずっとしんどい。光がいっぱいのラストシーンすらも優しく見せながらも厳しい。何度も傍観者でしかない自分自身を腹立たしく思った。これが現実に起きていることだというのは理解しているが、何もできない。せめてあいつらをぶち殴りにいけたら…!!

前日に見た作品のヒロインがクソッタレでストレスがたまったが、本作のヒロイン・ジョーは安定感がある。可愛くて優しくてまさしく天使だが、逆にこの無垢さが痛ましい。彼女があまりにも差別に無知であるという批判もあるが、父親やいとこたちとの対比としてこのまっさらさがパリエルムの戦い(同じく被差別民である大学の学長もその戦いを実感しているがゆえに「もっと厳しくなるから好きなように戦わせろ」と言う)に必要だったのだと思う。
また、ヨーギ・バーブさんがコミカルな役どころながらパリエルムの親友として活躍してくれて、唯一心の癒やしだった。

パリエルムは無用に自分の気持を語らない(なぜならダリトである彼は「語る自由」をもたないからだ。この演出も巧みだ)。
そんな彼の気持ちの表出を劇中歌が補ってくれるが、とりわけ“Naan Yaar”(僕は誰)が感動的だ。ミュージックビデオとしてここだけ切り取っても非常に完成度が高いし、歌詞を読まなくてもパリエルムの悲痛な叫びと孤独が伝わってくる。「青」がダリト解放のシンボルカラーであるということを知るとさらに深みを感じる。
https://www.youtube.com/watch?v=fxYdH58_0P0