Iwa

僕の名はパリエルム・ペルマールのIwaのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

現在のインドでは表立ったカースト差別は法律で禁止されているし、いわゆるダリトや部族民には様々なアファーマティブアクションが取られてはいる…が、人々の心の中までは変えられない。

大学にも被差別層のための枠があり、映画の中でも(絶対あってはならないのに)教師がそれを揶揄するような描写があった。
書籍「カーストとは何か」で、高等教育機関における彼らの自殺が問題になっているという記述があったけど、この映画を見ると…
頑張って大学に入って道を切り開こうとしているのに、慣れない環境の中で、学友からだけでなく教師からも憎悪を向けられて…
20そこそこの子が耐えられるようなものじゃないよな、それこそ酒に溺れていく人もいそう。女子トイレに放り込むとか本当に最低。

⚫︎ジョーとヨーギバーブ
2人とも高カーストだからこそ、カーストを意識していない、というか意識せずに生活できている。
(ヨーギバーブがお父さんから目を離したことを何でもないことに思ってるのが象徴的だなって思ったわ…気を張る必要がない側の人なんだよね)
おそらく彼らに聞けば、カースト差別なんてもう過去のものだと答えるだろう。同じ大学で同じ年代なのに、深い分断があるように思う。

⚫︎ジョーとの関係
↑のようにもう見えているものが違いすぎて、あれ以上の関係にはなれないよな。
「目を開けたら、最初に会った日のように笑ってて」っていうお願いは残酷すぎるし、彼はちゃんと笑顔を浮かべるけど、それは心からのではない。ていうかそういうふうに笑えるなら笑いたいと一番思ってるのは彼だろ…。

正直ジョーが避けてくれれば殺し屋だって雇われなかったのに、よく彼女に何も言わずに耐えたよ…。ここで新しいヘイト(ジョーから父への)を生み出しても何にもならないもんな…。俺だったら言っちゃうかもしれない。

仮に結ばれても、例えば「ペーッタ」みたいにねちっこく親戚から恨まれたりするんだもんなあ…というか結ばれたらジョーも殺さなきゃってなりそうだし。
なんか、彼らの言動を見ると、女性を1人の自立した人間として見てる気がしない。大事なプロパティの1つを低カーストに奪われるって感じよ…。

⚫︎カルッピ
黒も犬も良くないとされてそう(黒は神の色でもあるけど、低カーストのでもあるし)…しかしあんなに早くいなくなるとは!ジャケからずっと一緒にいる系かと思った!
カースト差別に縛られて動けないでいるとああいう風になっちゃう的なね…人間も犬も同じように殺すのがカースト差別よな…

⚫︎殺し屋
最初は殺人大好きサイコパス爺さんなのかと思ったけど、もっとやばかった。
あの殺人は尊いものであり、神の意向に沿ったものだ、っていう盲信があるのね…。だから罪悪感なんて少しもない(むしろ神に尽くしたという達成感)。狂気だけど本人は絶対自覚しないよな。
子供さえ殺すなんて…。

殺し方が完全にテットバンディぽいというか、弱者を装って被害者を誘き出してるんだよな。

主人公に対して、ダリトだって分かった時(出身の村がわかった時)に席を立ってたから、もう彼のことは嫌いになったのかと思ったけど、単に不浄だから避けただけなんだろうな。殺しを依頼された時に「いいやつだよ、説得してみる?」って言ってたので…。そう思ってんのに躊躇なくいくもんな。

⚫︎お父さん
お父さんに対して彼らがやったことは本当に恥ずかしい、大学生がやるようなことじゃない。

⚫︎勉学で変える
学長は自分が切り開いてきた側だし、勉学に励むことで自殺という方向に引きずられないように主人公を鼓舞したんだろうと思う。学長の言葉というか、学長の今の姿自体が、彼にとって、真っ暗の中で光になるだろう。

でも、同じことを差別してる側がいうのはおかしいよな?最後のジョーのお父さんのセリフだけど。
勉強頑張って弁護士とか立派な職に就けば可能性与えてあげられるかも、ってことでしょ?なんで虐げられてる側が変わらなきゃいけない、なんで上位カーストに”赦しを乞う”構造を変えようとしないんだ、変わるべきは差別してるお前らだろう、というね。
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