叡福寺清子

ジャパン・ロボットの叡福寺清子のネタバレレビュー・内容・結末

ジャパン・ロボット(2019年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

「儂が産まれた時にはそんなもんなかった!」というわかったようなわからんような理屈で,ご家庭にテレビも便利調理家電も置かない偏屈な父親.そんな父親の息子がIT技術者ってんですから,面白いですねぇ.父親は息子に「地元で働け」と厳命しますが,ケーララ州の片田舎にIT技術者の就職口なんてございません.ですので,日本のロボット会社のロシア支店に就職いたします.父親の健康が心配な息子は,自社の介護ロボットを置いてロシアに旅立ちます.
父親自身の偏屈が原因で家政婦さんは誰も長続きしませんでしたが,ロボットですから理不尽な命令でも淡々と受け入れます.そうなってくるとロボが愛おしくなってくる父親.名前と付けたり,服を着せたり,どこに行くにも同伴させます.さらにはロボの胸のモニターで息子とビデオ通話したり,若い頃からずっと片思いだった女性のフェイスブックを調べさせたりと,ロボに生活を依存するようになります.ですが,4ヶ月の実地試験を兼ねたレンタルであること,さらには同型ロボの危険性が指摘され,息子は父親からロボを取り上げようとしますが・・・

表面的には偏屈父さんの心境の変容を描いたコメディでありますが,ところどころ深いテーマが垣間見えた本作.たとえば,父親はロボを伴ってヒンドゥー教寺院を参拝しようとしますが,「信徒でないものは入山できない」と拒否されます.そこでロボが経典の一説を諳んじ,胸のモニターにシヴァ神を映し出すことで,信徒と認められました.でSF者なら,ロボは宗教の信者になれるのかというテーマの小説が,何作か思い浮かぶ事でしょう.さらには宗教を信じるとはどういうことか,そもそも宗教とは何かと問いかける小説もあったりなかったりラジバンダリ?
ロボですから,どれだけ長大な経典であっても一文一句間違わずに諳んじるし,高名な宗教者な言葉も引用できるでしょう.心がないロボがそれで信者として認められるのか,逆に言えば般若心経もちゃんと唱えられないけど「うちは先祖代々真言宗」というだけで真言宗徒と名乗ってもよいのでしょうか,そんな作品があったりなかったりラジバンダリ?

なにげないシーンでしたがそういう事まで考えてしまった三遊亭呼延灼です.こんばんわ.三遊亭呼延灼です.

あと,父親は結局ロボとは引き離されますが,スクーターを運転している息子の姿が父親にはロボに映っていたというラストで,ペットロスならぬロボロスという新しい心の傷をどう癒やすのか・・・もし記憶を移植した最新型モデルをあてがわれたとしたら,以前と同じような愛情を注げるのか・・・みたいなテーマもあったりなかったりラジバンダリ?