なべ

ドーベルマン・ギャングのなべのレビュー・感想・評価

ドーベルマン・ギャング(1972年製作の映画)
2.7
 小6の春、ぼくらの間でめちゃくちゃ流行った映画。まだ観てなかったY田君にも「絶対観た方がいい!」と強力に勧めたところ、彼は天王寺ステーションシネマで隣に座ったおっさんにいたずらされるというスキャンダラスな事件に遭い、ぼくらチビッコたちを恐怖のどん底に叩き落とした思い出深い作品でもある。
 いやあ、天王寺ステーションシネマには変態が出るとかねがね噂になってたんだよね。当時は都市伝説だと思ってたんだけど、今から思うとあそこはハッテン場のひとつだったのかもしれない。以来あの映画館には男子1人で行ってはいけないって不文律が生まれた。

 40数年ぶりに観たけど、やっぱり時代を感じる。ローマの休日や大脱走は今も古さを感じさせないけど、本作はハッキリ言って陳腐。まあ映画としての格も違うけどね。タッチはまるでテレビ映画。やっぱり人間が描けてないからだろうな(一応キャラはちゃんと設定されてる)。あ、でも懐かしさも手伝ってか結構おもしろかったよ。

 完全犯罪を目論む悪党のリーダー(失敗したマッシュルームカットで何を偉そうな顔をしてるんだかw)がひらめいたのは、猛犬による銀行強盗。当時まだ日本では珍しかったドーベルマンに銀行を襲わせるって趣向ね。
 犬たちの演技というか動きがなかなかよくて、結構ドキドキする。彼らをちゃんと撮れてるのがこの映画の一番の見どころだ!
 一応、どんでん返しがあったりするんだけど、内容が薄っぺらいので、これ以上何も考察するところはない。ただ、ウェイトレスから一味に加わるジューンがなかなかのタマでいい存在感を醸してた。でもこれは大人になった今だから感じ取れたこと。女性のしたたかさを知るには小6はちと早すぎたね。ジュリー・パリッシュって女優なんだけど、この人誰かに似てんだよなあ。
 この後、2、3と続編が作られるくらい、スマッシュヒットを放った作品なので、もし巡り合うことがあれば、ドーベルマン・ギャングをよろしくお願いします。
ちなみに劇伴はアラン・シルヴェストリ。今の大仰なオーケストレーションとは違って、薄っぺらいチープなサウンドを炸裂させてる。劇中何度もかかるカントリー調のテーマ曲はしばらく耳に残るぞ!

 今、リメイクしたら、6匹のドーベルマンの性格分けや犯人の人間性を描いて、結構な話題作になりそうな気がする。言わずと知れた名作をリメイクするより、こういう、今みると陳腐な作品をリメイクしたらいいのに。
なべ

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