ものすごく微妙なとこを突いてきた可愛らしい作品だな、と思った。
馬場の気持ちはわかりやすい。彼は、ただブラジャーを着けてみたくてしかたがない一心だ。
相川のことも「ブラジャーを貸してくれそうな同級生」という目でしか見ていない。
一方で、ブラジャーを貸すことになる相川のほうは複雑だ。
なんとなくの淡い恋心もあるし、秘密を共有している仲間意識もある。
馬場にとって自分は特別な存在だという気持ちも見え隠れする。
二人は、恋人でもなければ、親友でもないし、同志でもない。
友達以上恋人未満よりも、もっとあやふやな関係で、だからこそ、妙な輝きを見せたりもする。
この、なんとも言えない絶妙な関係性を映画として掬い上げたのが上手い。
思春期ならではの女の子の気持ちの揺れ、と言ってしまうのは簡単だ。
でも、ここで描かれているのは、ありきたりでパターン化された思春期でも、個人にだけどっぷりと浸かったものでもない。
もっと普遍的で、誰にでも起こり得る、でも、言葉にしづらい「思春期」だ。