ただのすず

屋根裏の巳已己のただのすずのレビュー・感想・評価

屋根裏の巳已己(2020年製作の映画)
3.8

「それで勝ったつもりかよ」

有名じゃない監督の100分の映画、
飽きたらすぐやめようと思ったんだけど、飽きなかった、魅せられた、凄い。

序盤からずっと鳴り響く不協和音。イヤホンでも遮れない、逃避行。
真夏の夜を、覆いつくすような不気味な扇風機の影、軋む屋根裏へ続く階段。
写真に残せないから描き続ける後姿。
暗がりに潜る白い背中と、行き止まり。
満ちる河原と、花火。
死者と飲み交わす、ビールとジンジャエール。


「勝つ」ということが、喧嘩に、という意味じゃなかったんだと、
中盤すぎて確信に変わったあたりから、やっぱ、ゾワっとした。



カメラワークと編集が独創的。
内容は死者に囚われている人、というだけだけど、少しも飽きない。
どんな話でも、自分の色に複雑に染められる人がやっぱ何より凄いと思う。センスがなければできない。

何度も何度も書いてるけど、やっぱこういう映画が見つかるたびに、映画を見て良かったって思う。
死と生が混濁している世界、好き。