すごく良くできたドキュメンタリーだから、この作品に登場するひとたちの痛みがわかるような気がする。だけど、そんな気がするだけ。
それなりに歳を取って、それなりにいろんな人を見ていて、毎日のように映画を観て、人間というものをわかった気がする。だけど、そんな気がするだけ。
だって、それは全部、私のものさしでしかないから。私のものさしとあなたのものさし、目の前に出して並べることはできないから、それを比べることはとても難しい。
どんなかたちなのか、何でできているのか、目盛りの数や単位は何なのか。
私のものさしとあなたのものさし、いったいどれだけの誤差があるんだろう。
いつも、映画に登場するあの人はこう思ってるんじゃないかとか、あの行動にはこんな意味があるんじゃないかとか、好き勝手に想像しているけど、この作品ではそんなことはできない。
今実際に生きていて、この先も生きていくひとたちの答えは、彼ら固有のものだ。
そんなちっぽけなものさしで、人間をわかった気になってちゃいけないよ。私は自分に言い聞かせる。
たまにこういう作品を観て、思い知らされないといけないな。
