ひでやん

恋人よ帰れ!わが胸にのひでやんのレビュー・感想・評価

恋人よ帰れ!わが胸に(1966年製作の映画)
3.2
主役と邦題からロマンティックなラブコメを想像したが、「金の切れ目が縁の切れ目なら、切ってしまえよお馬鹿さん」という物語だった。

フットボール選手にタックルされて病院送りとなったTVカメラマン。大した怪我でもないのに義兄の弁護士は半身不随を装わせ、巨額の損害賠償をせしめようとする…。

怪我をさせた選手は自責の念にかられ、仮病の男は良心の呵責に苛まれる事により、加害者と被害者、善と悪が逆転する。左手が80で右手が2という握力には思わず吹き出してしまったが、深刻さを吹き飛ばすコメディタッチの演出に乗り切れず、125分が長く感じた。

ジャック・レモンにはつい喜劇を期待してしまうのだが、良心の呵責に対して喜劇はどうも相性が悪い。偽りの悲劇を続ける今作の彼に感情移入できず、彼の世話を焼くフットボール選手がただただ気の毒だった。

悪徳弁護士を演じたウォルター・マッソーは好演で、べしゃりが立つ彼のシーンは見応えあり。電動車椅子を巧みに操作し、狭い部屋の中を踊るように移動するジャック・レモンは流石。

逃げた妻に未練たらたらで、義兄の口車に乗せられるお馬鹿さんは好きになれなかったが、悪になりきれないお人好しさんで良かった。

恋人よ帰ってくるな!わが胸に。
罪人を許しておくれ!わが友よ。
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